年上から年下へ
1. 待つ可能性が違う(足立と堂島家/ジュネスで買い物・ほのぼの?)
2. 大人の余裕ってやつ (主足主・マーガレット/PS4Gネタ・設定捏造・コスプレ&ペルソナ)
3. 憧れと勘違いしてるんだよ(主x足立x主/ネタバレあり。足立END捏造。昼寝。ペルソナ)
4. 若い子がよく分からない(主x足立/微エロ)
5. 一回り以上の差は思うより遠いから(足立視点で主→足立/シリアス。雨。ひざまくら)
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ポテトサラダ150円。
キャベツ98円。
塩昆布245円。
ん〜、塩昆布とふりかけ変えようかなぁ、どうしようかなぁ。
120円のパッケージを棚に戻して、とりあえず肉コーナーに向かう。
コンビニがほとんどないこの町では、ジュネスが夕飯の生命線だ。
弁当でもいいのだが、店内のラインナップは一通り食べてしまったし、
たまには変化がほしい。
といっても結局、いつもと同じ野菜をいれてしまっている。
なんだかなぁ・・・。
「あ! 足立さんだ〜!」
「おう、足立」
「げっ、堂島さん!?」
「げってことはないだろうが」
「す、すみません」
へへ、と頭をかいて堂島親子に近寄った。
「お前も夕飯の買い出しか?」
「えぇ、まぁ」
「それより足立〜、またキャベツだけかぁ?」
「そ、そんなことないですよ。
ほら、ポテトサラダに焼き鳥に」
「居酒屋メニューじゃないか、それ」
「はは、酒にあいますね・・・」
「ったく、そんなだから体、ほっそいんだよ。
たまにはちゃんと食えよ?」
「そういう堂島さんだって、総菜ばっかじゃないですか」
「今日は、甥っ子が外泊だからな。
俺と菜々子だけじゃ、そんなに作れんし・・・」
「足立さん、お料理できるの?」
菜々子が首を傾げる。
「え? まぁ、ちょっとならね」
「ほう・・・」
ぽん、と肩に手が置かれる。
嫌な予感と、いたずらっぽい笑みがぶつかる。
「なぁ、足立。うちで残業していかないか?」
同僚の押しの強さと菜々子ちゃんのお願いに勝てる存在なんて、この世にいるのだろうか?
僕にも無理でした・・・。
椅子にかかっていた少年のものらしいエプロンを着て、まな板の前へ。
「菜々子も手伝う!」
「あ、そう? じゃあ菜々子ちゃんはボールとお皿用意してくれる?」
「はーい!」
その間に、なれない手つきでキャベツを千切りにする。
ふぞろいなのは、ご愛嬌。
キャベツをボールにいれて、待機していた菜々子に、塩昆布いれてと指示。
さっくり混ぜたら。
「はい完成」
「できたー!」
「味見する?」
「うん! ・・・おいしい!」
「酒にもあうな」
ふらっと現れた堂島さんも参加して、立ったまま試食会。
ちょっと行儀は悪いけど、こういうのも悪くない。
「これなら堂島さんも菜々子ちゃんも作れるでしょ?」
「そうだな」
「ありがとう足立さん!」
「どういたしまして。じゃあ、後一品作っちゃおう」
次の準備に取りかかった僕に、菜々子が笑う。
「みんなで作ると楽しいね!」
「ね」
このくらいの年齢の子は、できることが増えて楽しいんだろうな。
できないことが増えていく僕とは大違いだ。
「菜々子ね、もっと作りたい!
足立さん・・・また来てくれる?」
「ん〜、堂島さんがいいっていったらね」
「お父さん・・・」
期待と不安の混じった菜々子の表情に、
堂島は苦笑した。
「・・・わかったよ」
「やったー! お父さん大好き!」
「はは、あんまり足立をあまやかすなよ」
「えぇ〜? そりゃないっすよ堂島さん」
「足立さんも大好き!」
「な、菜々子ちゃ〜ん」
「足立・・・俺の屍を越えてゆくか?」
チーン!
「ほ、ほら。焼き鳥もあたたまったことだし! ご飯食べましょ!!!」
『いただきます!』
「おいしいね!」
「醤油とってくれ」
「あ、テレビつけようっと」
「足立〜、口に飯粒ついてるぞ」
堂島がひょいっと指をのばし、それを食べる。
「ちょっ、なに恥ずかしいことしてるんですか!」
「あ? あぁ、つい」
「こ、子供じゃあるまいし」
「はは、お前は家族みたいなもんだからな」
「・・・もう」
なんだよこれ。
ドラマにでてくる仲良し家族かっつーの。
堂島さんの顔が見られなくて、下を向いてご飯をかきこむ。
家族のあたたかさなんて知らないし、そんなものクソくらえだ。
「また来いよ、足立」
約束なんて・・・。
「足立さん♪」
小さな小指が差し出される。
予想もしてなかった新しい可能性。
「じゃあ、俺もしとくか」
大きな掌が、ふわりとかぶさる。
僕は赤ん坊のように顔をくしゃくしゃにした。
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「なんで足立さんを召還できないのかな」
「ぶっ! げふごふがはっ!」
「大丈夫ですか?」
「だいじょ、ぶじゃな、い」
「そんなにおいしかったですか、キャベツ弁当」
背中をさする少年を睨んで、僕はどうにか息を整える。
ジュネスのフードコートに、他の人がいなくてよかった。
「君、ときどき天然だよね」
「そうですか?」
「さっきの発言、なんなの」
「あぁ。足立さんがベッドに行きたいって話ですか?」
「全然違うよ! 君の頭の中、どうなってるの!?」
「男子高校生の頭の中、さらけだしていいんですね?」
「いらないよ! むしろ粉砕・密閉して海にでも捨てて来て!」
「ペルソナの話なんですけど」
肩で息をする僕に、さらりと話題の転換。
「俺の場合、絆の力により新たなペルソナを生み出せます。
つまり想いの強さが、力となります。
強くなりたいという気持ちが力となり、
友人達はペルソナを進化させもしました。
ようするに自分の気持ちしだいで、
俺のペルソナも変化させることができるし、
新たなペルソナを生み出せるということです」
「はぁ、そうなんだろうね」
こういうところは、まともな思考だなぁ。
さすが、仲間内でリーダーになるだけある。
「だったら俺の強い想いに呼応して、
自分勝手に好きな形、好きな力を持ち合わせた
ペルソナ創りができるのではないかと・・・!」
熱を帯びてきた演説と拳に、足立の本能が警鐘をならす。
「だったら足立さんにそっくりなペルソナを創って、
好き勝手にあんなことやこんなことができるのではないかと・・・!!!」
「ヤダ・ムリ・キンシ! ぜぇっっっっったいだめだからね!」
「えぇ!? 人生は挑戦することに意義があるのだと本にも書いてありましたよ!?」
「時と場合を考えろおぉおおお! 君、絶対変なことする気だろ!?」
「例えば?」
「え?」
「例えばどんなことが『変』なんですか?」
ニヤニヤと笑う少年に、顔が真っ赤になる。
こいつぅうううう!
はめやがっったな!
「じょ、常識の範囲内で考えればわかるでしょ!」
「常識? ペルソナという存在自体が、一般社会の常識とかけ離れていると思いますけど?」
「え、まぁ、そうだけど」
「だったら論より証拠。
実践してみればいいんですよ。レッツゴー マヨナカテレビ♪」
「ちょ、君、うわぁあああああ!!!」
テレビの中、到着。
「ここ、どこ?」
見たことのない群青色の空間だった。
天井は夜空のように果てがなく、魂が震えるような錯覚を覚えた。
「ベルベットルームの別室を貸してもらったんです」
「ベル・・・?」
「イゴールさんたちにお願いして、特別に僕だけでペルソナが創れる場を用意してもらったんです」
足立にとって新しい情報ばかりで意味がよくわからなかったが、
少年が笑っているのを見ると、どうやら危険はないらしい。
少年のかけ声とともに、ペルソナ「イザナギ」が召還される。
「じゃあ、今から実践してみます!
この『イザナギ』に念を送り、ペルソナを変化させてみます。
足立さん、応援してくださいね!」
「やだよ。腰うったから、それどころじゃないよ」
「後からもんであげますから、むしろ今すぐ抱」
「はいはいはい! さぁペルソナ出してごらんよ!」
「・・・そうですね。
絆の力がペルソナの力。
足立さんが応援してくれたら、きっとすてきなペルソナが出ると思います」
とろけそうな少年の微笑みから目をそらす。
「も、いいから、はやく」
「はい。じゃ、いっきま〜す!」
「はいはい」
足立は、やる気のない声援を送りながら念をこめる。
バーカ、クソガキ、ガキガキガキ。
「できました!」
「ふぅん。って、えぇえええ!?」
閃光の後に、現れたのは、
八十神高校の制服を着た僕。
大きさは普通のペルソナより小さく、ほぼ僕と同じ大きさだ。
「うわぁ、かわいいv」
すねたような表情の僕(顔自体、高校生のときくらいに若返っている)に、少年はうきうきして近づいた。
「ちょっ、えっ、何で」
「足立さんったら、俺のことを思ってくれたんですね♪
だから、このペルソナの足立さんも高校生になったんですよ☆」
かわいいかわいいと連呼する奴に、僕は「違う」と直感した。
さっき、僕は心の中で(失敗を)願って、
「ガキ」というキーワードを思い浮かべた。
それが、あのペルソナを生み出したのだ。
「ガキ」すなわち子供の頃の僕を。
「しまったぁあああああ!!!
ちょっ、今のなし! もう一回! もう一回チャレンジしよう!」
「えぇ?」
「ほら、何度も試行錯誤をくり返すことによって、
より高レベルのものを創り出すことができるじゃない?
って脱がすなこのガキ! わかった!? ほら、次いくよ!」
「ちぇっ。わかりましたよ〜」
3つ目までボタンを外されていた僕のペルソナ(危なかった)を
しぶしぶ諦めて、また少年は集中する。
あ〜もう、堂島さん、ちゃんとこのガキしつけといてよね。
「できました!」
「はぁ。今度はまともに・・・って、えぇえええ!?
増えてる!?」
ペルソナは、2体出現していた。
姿形は、僕と堂島さん。
「しまったぁああああ! さっき堂島さんのこと考えちゃったから!?」
「執事服、かっこいいですね〜v 片めがねもいいなぁ♪」
「確かに・・・って、ちょっ、君も、何考えてんの!?」
「俺、執事服もってるんで、一度着てほしいなぁなんて♪」
「お見事でございます」
「誰!?」
突然聞こえた涼しげな声の方を見た。
うわぁ、すげぇ美女。
微笑みすら、においたつようだ。
「突然の訪問、申し訳ございません。
私はマーガレット。
お客様の旅のお手伝いをさせて頂いております」
「はぁ・・・」
「さきほど、今までとは異なるペルソナの気配を感じたものですから。
あら、これは・・・」
僕と堂島さん(?)のペルソナを見て、マーガレットは微かに目を見開く。
「2体、同時召還?」
「そうなんです。さっき偶然できたんですよ」
やたらハキハキと少年が答える。
「これも想いと絆の強さでしょうか?」
「そうね・・・私も初めて見たけれど・・・」
ふわりとマーガレットが微笑む。
「やはりあなたは私が思った以上の人ね」
「いえ。あなたのご指南があってこそです」
「ふふ。うれしいわ。隣で見ていてもいいかしら?」
「どうぞ! まだ途中なんで!」
「ありがとう」
どこからか出した美しい装飾の椅子に、マーガレットは座る。
突然のできごとに、僕は少年の袖を引っ張った。
「あのさ・・・まだやるの?」
「はい! 理論・実践・改善のくり返しです!」
「お手柔らかに・・・」
「じゃあ、次いきますよ!」
再び動き出す少年。
僕は、ちらりとペルソナを見る。
執事っていったら、メイドだよね。
「あ! メイドの服着てる〜v」
「ぎゃあああああ、しまったぁあああ! 次いこ次!」
「へへへ、猫耳♪ しっぽ♪」
「メイド変わってないじゃん!? オプションが増えただけ!? 次!」
「はは、夏の視線独り占め?」
「きわどいビキニ!? つかパンいちじゃん!?」
「ははは、文化祭に出られますよ♪」
「なんで女装!?」
「この女性用下着・・・足立さんの趣味ですか?」
「男のあこがれだろ!? って、女性の前で何いわすんだよ!?」
「ちっ。後一枚!」
「はがれ落ちる前に、次!」
「ツンデレ? クーデレ?」
「なんかほほ染めてるよ僕〜! どこぞの探偵王子か!?」
「ペアルック〜♪」
「鬼刑事が2人・・・まぁ、このくらいなら」
「次! アイドルバージョン!」
「クソガキィイイイイ!!!
今度は全員、僕かよ!? つーかまたペルソナ増えてる!?」
「足立さんが約48人。略して、ADT48?」
「新たなる力・・・すばらしいですわね」
「ちょっ、マーガッレットさん、感心してないで、
このガキ止めてくださいよ!?」
「私はあくまで補佐ですから」
「・・・マーガレットさん。
この足立さんのペルソナ、略してアダソナたちも、
俺のペルソナ全書に登録できますか?」
「えぇ、もちろん」
「コミュは・・・」
「もちろん『欲望』に」
「ありがとうございます!」
「ぎゃあああああ! 誰か止めてぇえええええ!!!」
「これも、お客様方の『欲望』ですから」
「さ! 次いきましょう足立さん!」
「いやだぁあああああ!」
・・・どれだけの時間が過ぎたかわからない。
気がついたときには、僕は救急車で搬送されていた。
霞がかった意識の中で、少年の声が聞こえる。
「足立さん! 心の相棒として、どこまでもついて行きますから!」
いらねぇよ。
心からのツッコミは聞こえるはずもなく。
僕は、無言で漢泣き。
この涙でペルソナ全書が消えればいいのに。
あぁ、群青色の輝きが・・・。
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終わってしまうと急激に気持ちがさめて、間がもたない。
もう1回したい気もしたが、
明日に差し支えそうで若い体を退けた。
ベッドに寝転がったまま、床に手を伸ばし、
脱ぎ捨てた服を引き寄せる。
「寝たばこ、危ないですよ」
「君も吸う?」
「遠慮します」
気だるい指で、火をつけると
微かに2人の間が照らされる。
「あぁ・・・君、高校生だよね。それとも堂島さんにばれるのが恐いのかな。
ちょっ、冗談だって。・・・んっ!」
「あなたは煙草吸っててください」
「さすがに危ないって! 灰皿・・・!」
「煙草落ちないように、気をつけてください」
馬鹿野郎。
弱いとこばっかり触ってくるな!
愛撫を受けながら、心の中で毒づく。
「ふっ・・・うっ・・・あっ、ん」
「ああ、ここ?」
「違、う。ば、馬鹿、そこじゃなっ」
ぐるんとへそを舐められて、
敏感なところを知りつくした舌でつつかれて、
指ではさまれて、わざと焦らされて、不意をつかれて。
持っていた煙草が、僕の肌のうねりに共鳴して震える。
ぬめった口にどうにか咥えたが、もう抗う術はなかった。
「も〜、朝日見えてきたじゃん」
「足立さんがエロいから」
「もう君、ほんと意味わかんない。
熱しやすいの? 冷めやすいの?
ねちっこいの? 我慢強いの?
まじめなの? 馬鹿なの?
どれか一つにしぼれないの?」
「足立さんが好きなんです」
「わけわかんない」
天使のような悪魔のようなきれいな顔を押し返す。
この笑顔にいつも振り回され、だまされる。
多面的な少年。
だからこそペルソナも複数あるのか。
「・・・朝食は君が作ってよ」
せめてわがままを言ってみる。
「キャベツの味噌汁、作りましょうか?」
「うん。絶対」
「・・・わかりました」
数時間だけでも寝るぞ、と決意も固く、
体を横たえる。
不意に頭をなでられた。
「・・・何?」
「足立さん、かわいい」
「うるさいよ。暑苦しいから抱きしめないでよ」
「そんなとこもかわいい」
「うるさい。もう寝る」
背を向けて、本格的に寝る姿勢を示す。
のびてきた手をちろりと見て、
小指だけ絡ませた。
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ひび割れた道路。
枯れた常緑樹。
赤と黒の周波数が飛び交う空。
コンクリートのいびつな塊を除けながら、
KEEP OUTのテープを通り過ぎる。
更に奥に進むと、唐突に白い扉が現れた。
木のようなあたたかみのあるノブを回すと、
やわらかい日差しが肌をなでた。
ここに太陽などないはずなのに、天井から白い光が差し込んでいるようだ。
扉を閉める。
白い部屋に、3つの呼吸音がこだまする。
眠っているケルベロス。
その白銀の毛並みにもたれるように眠っている寝癖をつけた彼の人。
軽く握られたこぶしが、赤ん坊のように無防備だ。
眠っている表情は幼く、すべてのものから解放されたように優しい。
ずっと見とれていたい、そんな平穏が横たわっていた。
「ん・・・」
足立の唇が、むにゅむにゅと動く。
うっすらと開いた目が俺をうつすのを見て、
面映い気持ちで近づいた。
「今日はここにいたんですね」
「眠くって・・・」
目をこする仕草すら見とれてしまう。
それを足立は勘違いしたらしい。
まだ眠っているケルベロスに目をやった。
「あぁこいつ?
なんかこの部屋にいてね。
シャドウだと思うんだけど、
襲ってこないし、近くに寄っても怒らないから、
ソファにしてた」
「恐くないんですか?」
「う〜ん、そりゃゼロじゃないけど、
なんだか落ち着くんだよね。
はは、動物苦手だったんだけどおかしいなぁ」
いたずらっぽく笑う足立に、俺は苦笑した。
「ときどき、あなたがよくわかりません」
「あたりまえでしょ? 別の人間なんだから」
「俺は、あなたをもっと知りたいんです」
「はぁ?」
「あなたのこと、気になって気になってたまらないんです。
わかりあいたいんです」
「・・・何を勘違いしてるのかしらないけど。君、馬鹿?」
足立は唇を歪ませる。
「あのね。僕は大人で君は子供。
それに僕はテレビに人をいれることを楽しむ人間だけど、
そんな心理をわかってどうするの? 君もテレビに、人いれたいの?」
「違い、ますけど・・・」
「だからぁ、わからなくていいんだよ。はい、終わり」
足立は頭の後ろで手を組み、もたれ直した。
そのひょうしに、ケルベロスが、間の抜けたあくびをする。
「はは、お昼寝の時間だってさ」
毛並みをなでて、足立は俺と目を合わせずに、ぽつりといった。
「君のせいだよ」
「え?」
「この部屋、変だろう?
君がたびたびここに来るから、
僕のつくった世界が干渉を受けてるんだ。
いわばこの白い部屋は君そのものってこと」
天を見上げて、足立は目を細める。
「まぶしすぎるよ」
「・・・」
「昼寝、しにくいじゃん」
「・・・」
「まぁ寝るけどね」
にこっと笑って、足立は横になった。
「何ぼさっと突っ立ってんの?」
「え?」
「まぶしいんだから、君が日よけになってくれなきゃ」
それはもしかして・・・。
「・・・・・・・・・隣、いっていいですか?」
「やだよ」
「お邪魔します」
「もっと離れてよ。狭いんだから」
「まぶしいんでしょ?」
寝癖のついた頭ごと、胸の中に閉じ込める。
「ちょっ、君っ」
「俺、今まで足立さんのこと、わかりたいと思ってたけど・・・」
焦る足立の耳元で、俺はささやいた。
「ずっといっしょにいられたら、それでいいです」
しばらくして、足立の溜息が胸にかかった。
「・・・・・・・・・ほんと、君って・・・」
ぶつぶつと零す足立の声が小さくなっていって。
「・・・おやすみ」
応えるかわりに、赤くなった耳を甘噛みした。
→ページの先頭に戻る。
→メインページへ。
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「足立さん、釣り勝負しましょう!」
「はぁ?」
「足立さん。ホームランバーで当たりがでたら、
俺のお願い聞いてくれますか?」
「やだ」
「足立さん。俺が愛家でスペシャル肉丼完食できたら、
今晩いっしょに・・・!」
「って、君、あと一口で食べ終わるじゃん!? って、あ〜!?」
「アイヤー! お客サーン、また完食ネ!
じゃ、お代はタダでイイデスヨー!
・・・あれ、お客サーン? お客サーン!?」
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「・・・何してるの、君」
「すみません」
「食べ過ぎで倒れるって、バカ?」
「すみません・・・本当に」
青くなった少年を店から出して、
どうにか土手沿いのベンチまで連れてきた。
ここなら雨もしのげるし、もどしたところで被害は少ない。
仰向けになって呻く少年にあきれながら、その横に座った。
「これ、飲む?」
買っておいたペットボトルを、頭の上にかざす。
「・・・どうも」
弱々しく受け取り、少年は腕で目元を隠す。
結局飲まず、頭を冷やすように持ち替えただけだった。
「君、テストで学年トップになるくらいなんだろ?
普段の生活もさ、よく考えて行動したほうがいいよ。
賢く生きないと、人生損するんだから」
「・・・」
「ま、今は耳が痛いかもしれないけど、大人からの忠告ってことで」
じゃあね、と立ち上がろうとして、
くん、と裾を引っ張られる。
隠された両目はあいかわらず見えなかったが、
裾をはなす気はないようだ。
「・・・だって」
「・・・?」
「足立さん、ふりむいてくれないじゃないですか」
雨に混じって、ぽつり、と零れる。
「賢くふるまったって、寛容さを見せたって、
伝達力を上げたって、あなたの心に届かないと意味がない」
「・・・」
「だったら、馬鹿みたいに体当たりするしか、ないじゃないですか」
雨の音が消える。
見えない糸に引かれるように、いつのまにか座り直していた。
「君ってさ・・・」
言いかけて、黙り込んだ。
こんなに馬鹿正直で素直な気持ちを受け取ったことも感じたこともなかったから、
どう言葉をかけていいのかわからない。
一回りも年が違っていて、
同僚の甥で、
男同士で、
はい付き合いましょう、なんて簡単にいくはずがないだろ?
そもそもこの田舎で、恋人同士なにするんだよ。
ジュネスにスイーツでも食べに行く?
いいですね、みたいな?
むりむり。ないない。
げんなりして上着を探る。
煙草をくわえたが、ライターが点かない。
あぁもう。こんなときに限って。
指先が空回りして、
火花が散るばかり。
オイルも少ないし、
もう好きとかありえないし、
僕を好きなんて、そんな、まさか、そんな、
別に、手なんて、ふるえてないし。
そんなの、偶然、だし。
顔がほてってきたのは、点かないライターに苛立ってるだけだし。
それにそれに・・・。
隣からうめき声がして、我に返る。
「吐きそう?」
「頭の位置、変えます」
「あ、うん」
「貸してください」
返事をする前に、太腿に重みが加わった。
「・・・ちょっと楽になりました」
「・・・」
「足立さん・・・」
「ん・・・」
「足立、さん」
沈黙と白い腕がのびてきて、僕は息を止める。
髪、額、眉、まぶた、頬、耳。
あごを通って、唇はゆっくり2度なぞっていく。
「・・・気分、悪いんじゃないの?」
「こうしてると楽になるんです」
僕は落ち着かなくなってきたんだけど・・・。
「止めないんですか?」
「吐かれるより、まし」
「・・・吐いちゃおっかな」
「蹴飛ばされたい?」
「足立さんになら、いいかな」
「どうしようもなくバカだね」
「恋ですから」
「バカ」
「足立バカです」
「ほんとバカだね」
くすくすと笑う少年に、長い溜息が出る。
「まだ吐きそう?」
「少し」
「はぁ、ちょっと眠りなよ。起こしてあげるから」
いぶかしげな少年の目を、僕の手で覆った。
常識とか理性とか、当たり前のもので自分を縛りすぎて、何だか今日は疲れた。
だから今だけ。
たった今だけ。
バカな君に、
バカみたいな僕を。
「雨がやむまで、貸してあげる」
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お題お借りしました。「現世の夢」