家族に贈る10のお題
01 上手な家族のつくりかた(堂島家・ほのぼの)
02 しあわせの足音
03 未熟なのはお互いさま
05 夕焼け小焼けにはみ出た長ネギ(足立と堂島家/ほのぼの・せつなめ?)
06 プライバシーは守りましょう?
07 柱に刻まれた想い出(堂島家・ほのぼの・せつない)
08 "血"
09 いつか去る場所
********************************
「はぁ、ただいま〜」
靴をぬぎながら、堂島は違和感を覚えた。
「菜々子?」
居間にあがって、あぁなるほどと溜息を吐いた。
やけに静かと思えば、
2人、畳で寝ていた。
「待っててくれたんだな」
そっと頭をなでて、微笑む。
投げ出されたリモコンを机に戻すと、
季節外れの果物が目に入った。
ジュネスで買ってきたのか?
1つ手に取り、
皮を剥きかけ、
ふと、それを眺めた。
まだ青いみかんに、
マジックのらくがき。
どこかで見たような寝癖のついた顔が描かれている。
堂島は畳に座り、のこりのみかんも手に取ってみた。
ふたつぐくりの女の子。
前髪が目にかかりそうな男の子。
ネクタイをつけた眉の太い男。
3ついっしょに掌に握れば、ぎくしゃくしながら話しているように見えた。
堂島は顔がほころび、甘酸っぱいそれを机に戻した。
あせってもいい。つまずいてもいい。
少しずつ時間をかけて色づいていけばいい。
甘くなるまで、いっしょに並べておくから。
寝息をたてる子供たちにブランケットをかけ、
自分ももぐりこむ。
2人を抱きしめるようにして
目を閉じた。
→ページの先頭に戻る。
→メインページへ。
********************************
真夜中に冷蔵庫を開けて中を探った。
喉が渇いたのと、少し腹に入れたくて、ビールと塩辛の瓶を探す。
取り出そうとした瞬間、堂島は固まった。
「足立ぃ!」
「ふぁい? って、いたた! 耳はアウトですって! 甘噛み以外、禁止!」
「うっせぇ! んなことよりきりきり起きろ!」
「え〜? なんなんすかぁ、もう・・・」
ぶつぶつ言いながら、眠っていた足立が起き上がる。
シーツが裸の胸をすべり、さっきまで堂島と絡みあっていた名残を感じさせた。
「これ、お前が書いたろっ!?」
足立の目の前に、塩辛の瓶をつきつける。
堂島家では個人の食べ物には名前を書いておく習慣がある。
堂島も、自分の好きな塩辛の蓋に油性マジックで「父」と書いて冷蔵庫にしまっておいた。
しかし、その文字は毛虫みたいならくがきで消され、かわりに赤で大きく「足立のもの」と書き直されていた。
「お前な! 人のもんに悪戯するんじゃない!」
「悪戯じゃないです。真実です」
「はぁ!?」
「堂島さんは僕のもの。僕のものは僕のもの。だったら堂島さんのものはすべて僕のもの。ゆえに塩辛も僕のもの。OK?」
「オーケー? じゃねぇよ! 勝手なことするな!」
「え、堂島さんは僕のものじゃないんですか。僕は堂島さんのものなのに」
「えっ」
くしゃっと歪められた足立の顔に、堂島は戸惑った。
「僕は堂島さんが好きで大好きで、堂島さんの柔らかいあそこにつっこんで一日中あんあん言わせたいくらい好きなのに、堂島さんは僕のこと、好きじゃないんですかっ。僕の体だけが目当てなんですかっ!」
「ちょっ、馬鹿、声大きいって!」
「うっわ、否定しないんだ! 近所中に言いふらしましょうか!? 僕の手でどんだけ堂島さんがいやらしい声あげて、どんな体位が好きかって! おまけにっ」
「あー! うっせぇ! がたがた言うな!」
足立の口を手で塞いだ。
「そういう話じゃなくてな! 俺はお前の行動に腹がたってるわけで!」
「・・・だって堂島さん、言ってくれないじゃないっすかぁ」
「なにを」
「僕のこと好きって」
「えっ・・・」
ストレートな告白に、背中がかっと熱くなる。
「僕だって好きだって言ってもらえたら、こんなことしませんよ。だけど、堂島さんてセックスはさせてくれるけど、僕のことどう思ってるとか、あんまり言ってくれないじゃないですか。だから、僕、不安で・・・」
足立が、子どもが泣く前のように俯いた。
「外堀からうめていけば、ちょっとは確実なものになるかなって・・・」
「足立・・・」
そこまで悩んでいたのか。
自分の言葉の足りなさに堂島は頭をかいた。
そして、すねるように唇を尖らせる足立が、妙に可愛らしくいじらしいと思った。
「・・・悪かった」
堂島はひざまずき、足立の頬にそっと手を置いた。
「・・・愛してる」
ぴくっと震えた足立に、自分から口づける。
「俺は、言葉にするのがどうも苦手でな。でも、お前が言うなら・・・お前がほしいなら、努力する」
「・・・堂島さん」
だからな、と言いかけた言葉は、足立の唇で塞がれて声にならなかった。
口内を貪られ、出しつくしたはずの欲望が、ずくりと疼く。
持っていた瓶を奪われ、指を絡められた。
「・・・塩辛、しまいにいかないと」
布団に横たわったまま、手探りで転がった瓶を探す。
隣にいる足立が、どこからかマジックを取り出し、堂島に渡してきた。
「じゃあ、蓋のところに『透のお嫁さん』って書いてくださいね」
「書けるかぁ!」
「じゃあ、新婚っぽいことしましょう」
抗議にふりあげた拳は引き寄せられて、足立の言葉通りの営みを再開するはめになった。
→ページの先頭に戻る。
→メインページへ。
********************************
マグカップの牛乳は少なくなり、テレビのCMは増えてきた。
隣に座っていた菜々子が「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と呼んでくる。
「明日ね、菜々子、学校で身体測定なんだ。
身長、伸びてるかなぁ」
「はかってあげようか?」
「え? いいの?」
「うん」
「ありがとう!」
メジャー、メジャーと部屋を見渡す間に、
ととと、と走って菜々子は柱にぴたりと背をつける。
「あのね。ずっと前に柱に印つけたの。
それより大きくなってるか見て」
「あぁ、いいよ。えっと、どこかな・・・」
しゃがみかけてすぐ、印を見つける。
堂島にしては低く、
菜々子にしては高すぎる位置に。
「それ、お母さんの」
菜々子は静かな瞳で見ていた。
「菜々子、お母さんに届くようになりたいな」
春を待つように微笑む小さな頭を、くしゃくしゃと撫でた。
「くすぐったいよお兄ちゃん」
「菜々子、柱に背中つけて」
「うん」
「あー・・・っと、あった。
うん。前より大きくなってるよ」
「本当ー!!?」
「うん」
「やったぁ!」
はしゃぐ菜々子に、俺は一つ提案した。
「いいね、それ!」
「いっしょにお願いしよう」
「うん!」
「・・・牛乳、いれよっか」
「うん!」
2人でいっしょに冷蔵庫を開けた。
「ただいま〜」
「あ、お帰りお父さん!」
「ん? どうした?」
もじもじする菜々子の肩に、俺はそっと手を添える。
「あのね! 菜々子、身長のびたんだよ!」
「へぇ。そりゃよかったな」
「俺も、はかってもらえませんか?」
「あ? メジャーあったかな・・・」
「いえ。柱に印をつけてほしいんです」
「柱ぁ?」
「菜々子も!」
「ん? どういう・・・」
俺と菜々子は手をつないで、柱に背をつける。
「あぁ、そういうことか」
堂島が2人分の印をつける。
「堂島さんもはかってください」
「俺が?」
「はやくはやく!」
堂島もぴたりと背をつけた。
「うぅ〜、よく見えないよ」
「ははっ。ちょっと待ってろよ。・・・ほら」
堂島は菜々子を持ち上げた。
「うわ〜、お兄ちゃんとお父さん、同じくらいなんだね」
「そうだな。冬にはもっと伸びてるんじゃないか?」
「菜々子も菜々子も!」
「そうかも、」
唐突に、堂島の口が閉ざされる。
「これ、お母さんのだよ」
「・・・・・・・・・そうだな」
父親の何かに耐えるような表情を見て、菜々子の顔にも嵐が吹き荒れた。
だがそれも一瞬のこと。
菜々子は、笑った。
「菜々子、いっぱい大きくなるね!
だから、だからね、お父さん。
また、印つけてね!」
菜々子を抱きしめる力が強まった。
「・・・お母さんに、報告しような」
「うん!」
何度もうなずき、堂島はささやいた。
「家族の、印だ」
→ページの先頭に戻る。
→メインページへ。
********************************
人肌が恋しい夜もあれば、だれもいない高台で夕陽を蹴りたくなるような日もある。
どちらかといえば今日は後者だった。
あいさつもおざなりに署を出て、ジュネスに行く。
総菜と、いつか食べるかもしれない野菜を買って、土手にさしかかった。
・・・失敗したなぁ。
前を歩いてるのが見知った人々ですよ。
駆け寄るには遠く、
こちらの存在に気づかれるかもしれない微妙な距離。
結局、道を変えることもできず、
足音を忍ばせながら、こっそりついていった。
女の子を真ん中に、少年と父親が手をつないでいる。
一番小さなその子が笑うたび、スーパーの袋も優しく音をたてる。
オレンジ色の夕陽が、その幸せを象徴しているかのように彼らを染上げている。
柵の向こうに飾られている絵画のように、
自分からは遠すぎて、きれい。
歩く速度を落としながら、ポケットに手をいれる。
夕焼けに伸びる自分の影が、極端に猫背で、目をそらした。
「あ! 足立さんだ!」
3人の視線が僕につきささった。
「あ、どうも〜」
しかたなく僕は駆け寄って、ぺこりと頭を下げた。
「堂島さんたちもジュネス行ってたんですか?」
「あぁ、今晩の夕飯をな」
「また総菜でしょ〜? 菜々子ちゃんたち食べ盛りなんだから、
栄養のあるものを食べさせてあげてくださいよ?」
「今日は俺が作るんですよ」
「へぇ、君すごいねぇ。長ネギなんて買って、何作るの?」
「そういうお前は何作るんだ」
「僕ですか? え〜と、キャベツ洗って、キャベツ切って、キャベツ食べます」
「結局、キャベツじゃねーか」
「ラ、ラーメンにいれるんですよ!」
「昼もラーメンだったろうが」
「あの・・・よかったら足立さん、いっしょに食べませんか?」
「へ?」
「あぁ、それがいい。なんなら鍋のしめにラーメンでもいいな」
「菜々子もラーメン食べたい!」
「え? でも、あの、僕・・・」
「足立ィ、お互い給料前だ。仲良くしようぜ?」
「決まりですね」
「ちょっ、えっ、ちょっとぉ!?」
「・・・あのね。テレビでね。
お鍋はみんなで食べるとおいしいって言ってたよ」
とどめは、はなまるをあげたい笑顔。
「はぁ〜、わーかーりーまーしーたーよっ。ごちそうになります」
横に並ぶと、はみ出た長ネギが、つんと当たる。
不意に差し出された手が、やわらかくて、あたたかくて。
家族の肖像が、揺れた。
→ページの先頭に戻る。
→メインページへ。
********************************
久しぶりに家族と食事した後、堂島はいつものように台所で新聞を広げていた。
さっきから同じ記事ばかり読んでいる。紙面の情報が頭に入ってこない。
対面に座っている少年が、じぃっとこちらを見ているからだ。
「お兄ちゃん」
少年の甘やかな声に、ぴくっと肩が震える。
「お兄ちゃん?」
「・・・」
「堂島さん」
「なんだ」
「聞こえてるじゃないですか」
少年の視線に耐えられず、堂島は新聞を下げた。
「・・・お前、わざと言ってないか?」
「堂島さんの照れてる顔が好きなんです」
さらりと言われて顔が赤くなる。
「・・・大人をからかうんじゃない」
がりがりと頭をかいて、新聞を畳んだ。
「風呂、入ってくる」
どうしてこうなった。
甥っ子の胸に背中をくっつけながら、堂島は湯船につかっていた。
はっきりいって狭い。密着しないと入れない。
はぁ、と溜息を吐いて、できるだけ背後を意識しないように、壁のタイルを見つめる。
「・・・堂島さん」
腹に少年の腕がまわる。
首元に息を吹きかけられて、堂島はびくっと震えた。
「最近、帰るの遅いですね」
「・・・仕事がたてこんでて」
「俺、避けられてます?」
痛いところをつかれて、堂島は押し黙った。
先週、酔った勢いも手伝って、「好きです」と詰め寄ってきた甥っ子と体を重ねてしまった。
秘密にしていたが堂島も少年のことが好きだったし、ベッドでもつれあっても男とすることへの嫌悪感がなく、かえって満たされた気持ちになった。だが目が覚めたとたん、いかに自分が浅はかな行動を取ってしまったかと後悔し、気持ちの整理が追いつかず、少年と2人きりになるのを避けていた。
「あの、な」
ここらへんが潮時か、と堂島はぽつぽつと言った。
「俺はお前のこと、可愛くて大切な甥っ子だと思ってる。だからこそこんなおっさん相手じゃなくて、もっと普通の幸せってものを手に入れてほしいんだ」
「俺は幸せですよ」
強く抱きしめられて、堂島はドキッとした。
「堂島さんと一緒にいると、ものすごく幸せな気持ちになります。それに、世間の幸せが俺や堂島さんの幸せとはかぎらないでしょう」
「・・・俺は恐いんだ。未来のあるお前の足を引っ張ってるんじゃないかって」
「個人の幸せで閉ざされる未来があるのなら、社会の方が問題ではないですか」
思わず振り向くと、唇をついばまれた。
「堂島さん。俺は結構、打たれ強いんですよ。それに俺たちの問題は、俺たち自身でまず話し合うべきでしょう?」
じっと見つめられて、その瞳に吸い込まれそうになる。
「堂島さんに拒絶されるのは、堪えます。だから、悩んでることがあったら俺に話してください」
強い決意のようなものを感じて、堂島は湯の中にある、少年の手を握った。
「・・・悪いな。本当なら年上の俺が言うことなのに」
ふぅ、と息を吐いて、堂島から口づけた。
「俺もお前のことが好きだ」
少年がはっとして、堂島を見る。そういえば堂島から「好き」と言ったのは初めてだ。
「お前は俺が守る。だから、お前だけ気を張ることはない。俺も、なにかあったらお前に相談するから。あまり背伸びするな。我慢ばかりしなくていい。たまには甘えていいんだから」
息を吸い直す前に、深く口づけられる。
堂島もそれに応えて、甘い唾液を交換した。幸福感で蕩けそうになる。
息があがってきた頃、不意に乳首を摘まれた。
逃げようにも湯船は狭く、逆に尻を少年の股間にすりつけてしまう。
「あっ、あっ、ぅあっ」
堂島の尻に、熱いものがすりつけられる。悪戯な手は、堂島の胸と股間の膨らみを弄り、堂島を熱くさせた。
「はぁ、あっ、もう・・・」
「一緒にイきましょう」
2人の動きが激しくなり、湯が波打つ。
肩に噛み付かれて腰がひくついたとき、2人同時に声を荒げた。
思う存分風呂場で触れ合ったあと、互いの体を拭き、1つの布団に潜り込んだ。
愛しげに少年の髪をすき、堂島は囁いた。
「俺は、お前の未来を守るよ」
「堂島さん・・・『俺たち』の未来です」
「・・・敵わねぇな。お前には」
小さく笑い合って、甘いキスをした。
→ページの先頭に戻る。
→メインページへ。
********************************
じわじわ増えます。
*お題お借りました・・・・・・「TV」