キスのお題


1.鼻先に挨拶のキス(長瀬x一条。通りすがりの人/友達のはずが・・・?)
2.足の裏にくすぐりのキス(主足/軽いヤンデレ主人公。アイス)
3.腕に応援のキス(主人公とショタ/シリアス)
4.首にじゃれ合いのキス(ナナコン番長/主人公がナナコン&ムッツリ&キャラ崩壊。菜々子と猫)
5.頬に子供扱いのキス(主x堂島x主/できたての関係)
6.傷跡に消毒のキス(主x花村。/微エロ)
7.鎖骨に独占のキス(足立x堂島/微エロ)
8.自分の手に練習のキス(雪→千枝/男子ver.注意書きからどうぞ)
9.額に慰めのキス(主x足立/エロ。短め)
10.肩に誘惑のキス(主と足立と?/ギャグ。足立の部屋)
11.背中に切ないキス(主x堂島x主/エロ。体の関係。別に好きな人がいる2人。ネタバレあり)
12.アクセサリーに気晴らしのキス(主と完二。陽介/私室で勉強)
13.足の指に前戯のキス(足立x堂島前提の堂島x足立/微エロ? 下ワード注意)
14.耳に嫌がらせのキス(主x足x主/主人公の部屋。足立視点)
15.手の甲に王子ごっこのキス(りせと直斗/演劇の練習)
16.へそにお仕置きのキス(足立x堂島/いたずら)
17.瞼にお休みのキス(主人公とクマ/ネタバレあり。クマのお泊り。クマ悩む)
18.髪に愛しさのキス(足立と菜々子/小学生とナナコン兄ちゃんも)
19.指先に戯れのキス(足立x堂島x足立/微エロ。飲み会)
20.唇にレモン味のキス(陽介受難の日/捜査隊メンバー・クラスメート・リップクリーム)
21.物陰で(足立x主x足立/噛みつくように)


******************************************





























































































































「世界にはいろいろなあいさつがある。例えば、そうじゃのう・・・」
しましまの杖をふりながら、祖父江が話を続けている。
一条は、ばれないようにあくびを噛み殺した。
夕べは茶の稽古が遅くまで続いたうえに、
小テストの勉強であまり寝つけなかった。

人並み以上が求められる一条家にとって、 なにごとも「できてあたりまえ」。
康も器用なほうだし、そつなくやっていると思うが、
つい気が緩むときもある。

もう一度、あくびを噛み殺して、長瀬の方を見た。

げ。あいつ堂々と寝てやがる。

「長瀬、お立ちあれ」

ほら、やっぱり祖父江に目をつけられた。


「長瀬! あてられてるぞ!」
「あぁ? 答えなんだ?」
「はぁ!? えーと鼻と鼻をこすりつける、だっけ?」
「よし、わかった」

すくっと立った長瀬の顔が近づいてくる。

「え?」

長瀬の息がかかって、
鼻にやわらかい感触。

「こういうことだな」
「ちょっ! 長瀬! 実演じゃねーよ!
答えるだけでいいんだって!」
「あ? それを早くいえよ。
答えは鼻にキスだ」
「鼻しかあってねーし! みんなどん引きだし!」
「チャイムなったぞ」


その後、礼もそこそこに長瀬を廊下まで引っ張り出した。

「お前、なにしてくれてんの!?」
「寝ぼけてた」
「だよな! わかってたけど〜! お前のせいで、俺らホモ疑惑浮上だぜ!?」
「いいたい奴はいわせておけ」
「え・・・・・・・・・。
なんか意外だな。お前、いつもなら怒鳴りそうだけど・・・」
「嫌だったか?」
「嫌っつーか、びっくりした、けど・・・」
「ふーん」
「え? 何怒ってんのお前?」
「はっきりさせようじゃねーか」
「え? 何だよお前。え? 何で実習棟のトイレ?
え? 連れションとか勘弁。いや個室に2人はだめだろー!!!?」

ギィ、バタン、カチャッ。






「長瀬、一条知らないか?」
「今日は部活休むってよ。俺も先に帰るから」
「そうか? 愛家は今度な」
「おう。じゃあな」

長瀬を見送って、首を傾げた。
「予備のジャージ持って、どこいくんだろう?」





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































軋むような体の痛みに目が覚めた。
ぼんやりと霞む視界の中、寝返りをうとうとして、なぜか腕が突っ張った。
「・・・ん」
何度か同じことをくり返して、目が冴えた。
腕・・・縛られてる?


「あ、起きました?」
声に誘われるまま、僕は顔を上げた。
「・・・君、何で」
正面に、少年が座っていた。
優雅に足を組み、映画でも観ているようにやけにくつろいだ表情だ。
僕の部屋なのに。
何、この子。

嫌な予感がして、とりあえず頭の中を整理する。
僕はスーツのまま椅子に座らされ、後ろ手に縛られている。
今日は自宅に帰って、かじかんだ手足だけシャワーで温めて、
買ってきた総菜で夕飯を食べたところまでは覚えている。
それから、記憶はない。
たぶん眠ってしまったのだろう。
この少年を家に招いた記憶はない。
まぁ、いつのまにか入り込んでいるときがあるので、
百歩譲って置いておくとして、縛られる理由がわからないのだが。

「ねぇ、これ何の冗談? 縄はずしてよ」
「そんなもったいなこと・・・嫌です」
「え〜と、意味がわかんないんだけど?」
「そうですねぇ。じゃあ、僕の質問に答えてくれたらはずしてもいいですよ」
「は・・・、はは。君、いい趣味してるねぇ」
やばい。何聞かれるんだろ。
縛られた手をこっそり動かす。
これさえ外せたら、一発逆転なんだけどなぁ。

もったいぶった仕草で、少年は立ちあがり、
僕の顔を覗き込んできた。

「昨日、ジュネスに行きましたよね」
「あぁ、うん」
「菜々子と会ったでしょ?」
「そうだね」
「菜々子と一緒に何を買ったんですか?」
「そりゃ惣菜とか、キャベツとか・・・っ」
ぐっとネクタイを引っ張られて、息が詰まる。
「足立さん。僕はそんなこと聞いてないんです。
あなたが買ったものはもちろん興味がありますが、
僕は『菜々子と一緒に選んで買ったもの』の話をしているんです」
「・・・っ。だったら菜々子ちゃんに聞けばいいでしょ!」
「菜々子は教えてくれないんです。内緒だって」
「そりゃ、女の子なんだから秘密にしておきたいことの1つや2つあるでしょ?」
僕にだって、たくさんあるんだから。
「だから、あなたに聞いているんじゃないですか」
「・・・菜々子ちゃんに口止めされてるんだよ。
そのうちわかると思うから、待ってあげなよ」
「・・・」
「ね。だからもう遊びはお終い。縄ほどい」
「そうやって誤摩化すんですか?」
「・・・は? え、本当のことなんだけど」
「どうしてみんな、強情なんですかね」
溜息を吐いて、スーパーの袋から何やら取り出す。
アイスだ。しかも、ちょっと割高のカップタイプ。

「本当は俺だってやりたくないんですよ? でも、聞き分けのない人にはお仕置きしないと・・・」

そういって、僕の裸足に、アイスを乗せた。
「ひっ・・・!」
震えた足首を掴まれて、また白いもので濡らされる。

「男体盛りならぬ、足立盛りですかね?」
「君、こんなことして楽しいの?」
「えぇ。とっても」
僕に見せつけるように、足についたクリームを舐め上げる。
その白い液体が、粘ついた何かに見えて、顔をそらした。

「白状する気になりました?」
「言うわけないでしょ」
「ふーん、そういう態度とりますか。じゃあ仕方ないですね」

溶け出したアイスを零さぬよう、少年は舌で丁寧に舐めていく。
指の間、裏まで舌で、口で、愛撫されて、僕の背筋にぞくぞくっと震えがくる。

「ちょっ、やだっ! くすぐったいって!」
「白状するまでだめです」
ちゅぱっと音をたてて指を舐られて、じんと腰が熱くなる。
「ほんと、やだ、あ、はぁ、も、やぁ・・・!」
「足だけでイってみます?」
「ふ、ぁあ、やだ」
「何がいやなんですか。こんなに感じて・・・」
「君が、触るからだろ・・・!」
「こんな風に?」
白い指が僕の服を這い回り、胸の尖りをぎりっと摘む。
「んぁっ」
「最初はくすぐったがるだけだったのにね」
「も・・・ゆるして」
「いいですよ。足だけでイけたら、ね」

くすくすと悪魔のように少年が笑う。
絶望のような昏い快楽の中、僕は眩暈すら覚えて。
もがくように床を掻いた。




→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************






























































































































商店街を曲がろうとして、たまには違う道から帰ろうと、草むらをかきわけた。
方角さえ把握していれば迷うことはないだろうし、
わからなくなれば元来た道を戻ればいい。
理屈よりも軽い足取りで踏み出して行くと、
しばらくして広場のような場所に出た。
周りの景色からして、河川敷の裏手だろう。
表通りと違うのは、俺以外の人がいないことだ。
そのかわり、美しい風景と不釣り合いな異物があった。
粗大ゴミの山だ。中には、古いテレビもある。
「ここにもテレビか・・・」
いつも出入りしている、赤いテレビに似ているそれに近づいた。
触れてみると、やはり画面に手が埋まる。
ここもマヨナカテレビの影響があるのか。
そっと手を引き抜こうとして、俺は目をむいた。
テレビの中から出てきた『白い手』に腕を掴まれたのだ。
「・・・っ!?」
抵抗する間もなく、強い力で引っ張られーーー浮遊感。
テレビの中へ落ちて行った。





「痛っ・・・」
打ち付けた腰をさすった。
じわっとにじんだ目元をこすり、立ち上がった。
霧が深くてよくわからないが、いつものテレビの中とは違うようだ。
クマもいないのに、帰れるのだろうか?
そもそもさっきのは・・・。


「こんにちは」
はっとして、俺は振り返った。

半ズボンの少年が立っていた。
さっき俺を引っ張ったのは、この子だろうか。
「君は・・・」
「あれ、もう忘れちゃったの?」
くすくす笑う少年に見覚えがあった。いや、知っていた。
だって、彼は・・・。
「自分のこと、忘れてないよね?」
小さい頃の『俺』の顔をして、少年は首を傾げた。
ただ、記憶よりも、悪戯っぽい表情で。

シャドウだろうか?
目を細めて、少し左足を引いた。
「すまない。急いでるんだ。ここから出る方法を知らないか?」
「ん〜? 知らないよ♪」
「・・・」
「ねぇ。それより僕と遊ぼうよ。サッカーがいい? バスケ?
カードバトル? 用意するから、なんでも言って!」
「悪いが、できない。他の人と遊んでくれ」
「・・・他の人って?」
「え?」
「忙しいって、いつできるの?」

少年の目が不穏な黄色に染まり出す。

「僕、またがまんするの? なにも言っちゃいけないの?
寂しいって、悲しいって思っちゃいけないの?
僕なんて、いなくなっちゃえばいいの?」

少年の目から涙が零れた。


あぁ、これは。
俺が今まで押し殺してきた気持ちだ。
友達がほしくて、もっとみんなと一緒にいたくて。
両親の転勤には逆らえなくて、何も言えなくて。
何度も笑顔の底に押し隠して、切り離してきた『俺』だ。
そうしないと新しい生活にも新しい友達にもとけこめないから。

でも、いくらこの苦しさを押しつぶして放り捨てたところで、
なかったことにはできなくて、心の奥で怯えていた。

無理に忘れようとしていた、あの日の感情。



泣きじゃくる「俺」の頭をそっと撫でた。
「俺が、お前をずっと追いつめていたんだな」
「ふぇ、えぐっ」
「でもな。その悲しみもずっと続くことはないよ。
だって今の俺には、心から信頼してる仲間がいるから」
「・・・ほんと?」
「あぁ。本当だ」
「お兄ちゃんくらい大人になったら、もう悲しくない?」
「・・・悲しいことはあるよ。
なかなか歩み寄ってくれない人もいるし・・・」
「そんなのやだ」
「うん。でも、俺は諦めないから」
「・・・お兄ちゃん、『僕』よりも強くなった?」
「どうかな? みんなに頼ってばかりだし」
「・・・1人じゃないんだね」
強く頷くと、少年に微笑みが戻った。
「1つ、約束するよ」
「なぁに?」

幼い瞳を見つめて、俺は口を開いた。
「お前の孤独の分だけ、俺は大切な人の悲しみに寄り添う。
暗闇に潰されそうな人がいたら、全力でその人の力になる」
「・・・しんどくない?」
「相手が幸せだと俺もうれしいから」
「また、こっそり泣いたりしない?」
「ん〜、じゃあ、自分も含めて『大切な人』にする」
「そっか。じゃあ、安心だね!」
頷くと、少年が俺の胸に飛び込んできた。
おずおずと抱きしめると、軽やかな笑い声がして、少年が離れていった。

「じゃあ、お兄ちゃん。いや、未来の『俺』、がんばってね!」
「あぁ。お前もな」
「うん! ねぇ、腕出して」
「こうか?」
右手を出すと、微かに痛みが走った。
たぶん、テレビに入ったときに擦ったのだろう。
そこに、小さな唇がそっと触れた。
「うん。これで痛くないと思うよ」
「・・・本当だ。でも、何で・・・」
「傷を、もらったの」
少年が細い腕をあげると、赤い擦り傷ができていた。
「お兄ちゃんの傷をもらうことで、テレビの中に来た事実ごと消すんだ。
だから、もう帰れるよ」
「・・・お前は、どうするんだ?」
「うーん。お兄ちゃんが元気だったら、消えるだろうし、
お兄ちゃんが辛いとこのままここにいると思う」
「・・・」
「だからさ。僕に心配かけないように、頑張りなよ!
くよくよしてたら、こっちの世界に引きずり込んじゃうからね!」
「・・・それは困る」
「だが断る!」
「お前なぁ・・・」
「へへ。それもお兄ちゃん次第ってこと。
・・・・・・・・・・そろそろみたいだね」

少年の言葉が終わるやいなや、俺の体が光りだした。
「さよなら」
「うん」
「ありがとうお兄ちゃん。僕のこと、受け止めてくれて・・・」
「当然だろ。お前は、俺なんだから」
「・・・その言葉、聞けただけでもよかった」
「俺も」
「あ、あのさ・・・!」

少年が、何か叫んだ。
その瞬間、俺は光に呑まれて、意識を失った。






気がつけば、あのごみ置き場に倒れていた。
体を起こすと、肩にテレビの角が触れた。
土ぼこりを払って携帯を開くと、まだ今日の日付だ。
ほっとして、少年との邂逅に少し浸る。


最後に少年が言った言葉は、何だったんだろう。
光でよく見えなかったが、微笑のような何かに耐えるような不思議な表情だった。

でも、わからなくても問題ないのだろう。
あの「俺」も、ここにいるのだから。

夕陽に染まったシャツの胸元を、強く握った。




→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************






























































































































「ただいま」
首を回しながら、家にあがった。
時刻は深夜に近く、消し忘れたテレビの光がフローリングに反射して、
堂島の足下を照らしている。
上着を椅子にかけて、ソファまで歩いていった。

「おい、起きろ」
甥っ子が、微かにみじろぐ。
「こんなところで寝たら風邪ひくぞ。布団、入れ」
子どものように目をこすり、少年が体を起こす。
「おかえりなさい」
「あぁ・・・ただいま」

「堂島さん・・・」
うっとりとささやいて、少年が目を閉じる。
甘い表情に、堂島はうろたえた。

今年に入って、だれかと関係をもったこともなければ、
菜々子に対して親愛のキスをしたことすらない。
最近、甥っ子と通じ合う仲になったにもかかわらず、
家族の情との板挟みで、ふれあうことは極力避けていた。

だが、俺だって男だ。
好きだという感情を具体的に伝えたい。

心臓の高鳴りにさからわず、唇を近づける。
ついばむようにして、顔をはなした。

「・・・もう1回」
「お、お前なぁ」
「ずっと待ってたんですよ?」

腕を引かれて、横に座る。
潤んだ瞳が、テレビの光に怪しく瞬く。

「いや、それはうれしいが、その・・・」
にじり寄られて、どうしたもんかと視線をそらしたところで、
机に置かれた教科書を見つけた。
「お前・・・そういえば明後日からテストだな」
「・・・一応」
「学生の本分を忘れるな」
「・・・だめですか?」
「ちゃんと寝ないと、せっかくの努力がむだになる。
お前のがんばりをむだにすることは、俺にはできん」
「・・・・・・・・・わかりました」
俺がひかないのをわかって、甥っ子が視線をそらした。
すねた表情に、「おい」と顔をむかせて、

なめらかな頬に、口づけた。

「子どもあつかいですか?」
「そうじゃない。その・・・。
テストが終わったら、もっと大人らしいことをしよう」

少年が目を見開く。

「俺だって、お前のことを思ってんだからよ・・・」

照れくさくなって、頭をかいた。

「だ、だからな。今日は、はやく、寝ろ」

見つめ合うと、互いに顔が赤くなった。


「・・・堂島さん」
「・・・な、何だ」
「テストあけの日、待ってます」
「あ、あぁ」

少年は微笑み、ゆっくり立ち上がる。
ふわりといい香りがして、俺の胸はざわめく。

わざとらしく顔をしかめて、テレビを切った。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































ガレージ前で猫をかわいがること1ヶ月。
堂島家の周りには猫が増えつつあった。
飼っているわけではないが、悪さをするわけでもないので、
時間を見つけてはいっしょに遊んだりご飯をあげたりしている。
今日も学校帰りに、かわるがわるもふもふしていると、坂の上からかわいらしい足音が聞こえてきた。
「あ、お兄ちゃん!」
「お帰り」
「猫さん今日もいるね。菜々子もさわっていい?」
頷くと、菜々子もしゃがんでなではじめた。
「ん〜かわいいね! この子たち、名前は?」
「う〜ん、知らないなぁ」
「じゃあ菜々子が名前つけてもいいかなぁ?
この子とこの子はラブとリーンで、その子はジュネ、あの子はプリン!」
「・・・候補にしとこっか」
「うん! あ、猫さんたち名前、気にいった?」
軽やかに笑う菜々子に、猫たちは甘えてくる。

抱き上げられた白い子猫が菜々子の首もとをふんふんと嗅ぎ、
顔をおしつけたり桃色の舌でぺろぺろ舐めたりしている。
「くすぐったいよ〜ラブ〜」
なんという極楽絵図。
「えへへ。ラブは甘えん坊なんだね!」
「・・・・・・・・・そうだね」
「あれ? お兄ちゃん、具合悪い?」

複雑な気持ちで、俺は天使から目をそらした。
目の前でくり広げられる光景は、かわいい菜々子とかわいい猫たちのすばらしい響宴である。
どんな名画もこの神々しさには敵うまい。
しかし、しかしだ。
いくらかわいい猫とはいえ、菜々子にやすやすとふれるとは、うらやまけしからんではないか?
お兄ちゃんにもその権利があるのではないか!?
しかし、それをしてしまったら俺の何かが終わるような気がしてならない!
主に人生的な何かが!

「俺はいったいどうすれば・・・」
「お兄ちゃん・・・大丈夫?」
「大丈夫じゃないかも・・・」
「どっか痛いの?」
「・・・頭?」
菜々子は心配そうな顔で、俺の頭に掌をちょこんとのせた。

「いたいのいたいの飛んでいけ〜!
いたいのいたいの飛んでいけ〜!
・・・どう? ちょっと楽になった?」
照れくさそうに菜々子が笑う。
かわいすぎて、ぎゅっと抱きしめた。

「ありがと」
「えへへ。またしんどくなったら菜々子にいってね!」
「うん。お願いする」

菜々子の清らかさに涙が出そうだった。
あぁ、俺は間違っていた。
猫に嫉妬するなんて。
菜々子を愛しているなら、菜々子が愛し、菜々子の傍にいるものも愛すべきではないか?
(菜々子に近づく男子はのぞく)

俺は今、ここに誓おう。
生涯菜々子を愛すと。
そのために、今は理性的で「いいお兄ちゃん」でいよう。
そう・・・菜々子との来るべき未来のために!



「お兄ちゃん、そろそろ家、入ろっか?」
「うん。今日のご飯、何がいい?」
「お兄ちゃんといっしょに作れるもの!
・・・菜々子、お兄ちゃんといっしょにいたいから」
菜々子の頬が桃色に染まる。


おぉ神よ。
早速、誓いを破らすつもりですか。



「お、お兄ちゃん! 鼻血でてるよ!」
「菜々子・・・お兄ちゃんは今日、戻らないかもしれない」
「お兄ちゃん? お兄ちゃ〜ん!?」

菜々子の声が響く中、俺は泣きながら河原に向かってダッシュした。

あぁ、俺は、俺は。
・・・今すぐ猫になりたい。




→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































「うわぁああああ!!!」
ガシャーン!

「大丈夫か陽介!?」
「だ、大丈夫じゃない、です」
大事な場所をおさえながら、はねまわる。
今年入って何回目だよ、自転車でこけるの。
「うぅ。まじ痛ぇ。これって冷やしたらいいのか?」
「トイレ、行くか?」
「あぁ。冷やすとかは別にしてもな。
あ、お前ん家近かったっけ? ちょっと貸してくんねぇ?」
「いいよ。行こう」
「頼みます・・・」


相棒の家は、だれもいなかった。
日曜日だし、菜々子ちゃんも堂島さんも出かけているのだろう。


「お邪魔しま〜す」

かばうように歩きながら、相棒の後を着いていく。

「トイレ、ここだから」
「ありがとな・・・」
「陽介・・・」
「ん?」
「お前、けがしてるぞ」

見れば、手の甲を少しすりむいている。
「あぁ。このくらい舐めときゃ治るって」
「陽介らしいな」
「俺ってば強い子だから」
「一応、消毒しとくか?」
「あーまぁ、水で洗っ」

言葉がつまった。
相棒がひざをつき、うやうやしく俺の手をとったのだ。
「何して・・・っ」
目が離せなかった。
赤い舌が、俺の手の甲をゆっくりはっていく。
「・・・っ、あっ」
慈しむように舐められて、痛がゆくて、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「も、いい、から」
「まだ、一カ所あるだろ?」
膝をついたまま、相棒が俺に近づく。
ほとんどくっついているといっていい。
金属音がしたかと思えば、急にひんやりとした風を感じた。

「色、変わってるな・・・」
「え? ってわー!? 何してんだよお前!?
つーか、何で俺の見て、つーか、何で脱がしてるんだってーか、
なになに何なの!?」
「だから消毒」
「いやいや俺のモノまでいいですからー!? つーか見るなー!」
「かわいそうに。痛かったろう?」
「も、いーから! お前、あっちいけよ!
地味に傷ついた顔すなー! つーか、どけって! わー!」

相棒が、俺の、それを、きれいな口に含んでいた。

やべぇ、やべぇよ。
打ったところは、じんじんするけど、 き、気持ちいい。
「ん・・・っ、はっぁ」
静かな廊下に、粘着質な水音が響く。
「や、だ、・・・もう、俺・・・」

あと一舐め、というところで、動きが止まった。
「・・・相棒?」

「消毒、できたかな」

俺がぼう然としている中、顔色も変えず去っていった。

「え、え、えー!?
ちょっと俺、これどうしたらいいんだよー!?』

おさまりそうにないソレを見て、ますます顔が赤らむ。

「う〜、でも人ん家で、今から遊び行くとこで・・・」

うなって悩んで赤くなって。
がまんできなくて・・・。

俺は小さく震えた声で、あいつの名前を呼んだ。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































とろとろにとけていた意識が浮上して瞼まであがってきた。
眠い。寒い。重い。
起き上がろうとして、急に痛みを感じた。
「・・・ん?」
床に寝転がったまま、視線を自分の体に向けてぎょっとした。
人の頭。それが自分の肩のあたりにのっている。
しかも、あろうことか俺の肌に吸い付いている。
よく見たら足立だ。
「何してんだお前!?」
さらに吸い付きが強くなる。
「ちょっ、お前、痛い、痛いって! やめろ!」
頭をつかんで力をこめると、ちゅぱっ、と卑猥な音をさせて、
足立が顔をあげる。
「やめません」
「はぁ?」
「これはオシオキですから」
「は? お前、酔ってるだろ」
「酔ってません」
「嘘つけ。俺よりビール飲んでただろうが」
「もうさめてるもん。正気だもん」
「んな聞いてたこともねぇ声でいわれても説得力ねぇよ。
とにかく俺の上からどけ」
「いやでーす」
また近寄ろうとする足立の頭を、押し返しながら、舌打ちした。
「おい、本当にお前、いいかげんに・・・!」
「だって、堂島さん、色気ふりまきすぎなんですもん」
「は?」
「いっつもシャツの前あけて、ただでみんなに鎖骨みせちゃって。
ほんと何アピールですか? 総受になるつもりですか?」
「えっと、よくわからないんだが」
「だ・か・ら! 僕だけに見せればいいんです! 淫乱なとこは!」
あっけにとられて、一瞬腕の力をゆるめた。
すかさず足立の舌が、首をはった。

「うっ・・・あっ」
「ほんと、エロいっすよね」
耳元でささやかれて、ひくっと体が震える。
あいた手で乳首をすられて、声があがった。
「あ〜やばい。このまま食べたいのはやまやまなんですけど。
ちょっとは自覚してもらわないと、ね」
ぴりっと鎖骨に傷みが走った。
足立が思いっきり噛んでいるのだ。
そのくせ手は俺の弱いところを撫で、つまみ、弄るものだから、
傷みと快楽で、神経が焼き切れそうだ。
「も、やめてくれ・・・」
「はは、反対側も噛んだらね」
「や・・・っ!」
「とかいって、ちゃんと屹ってんじゃないですか。
あ、まだいっちゃだめですよ。オシオキが終わるまではだめ。
だって・・・」

あんたは俺のもんなんですから。


熱いささやきが、俺の体をはっていった。







昨日はひどいめにあった。
いや、今日の朝まで、か。

堂島は署の喫煙室で頭をかかえていた。

「あ〜堂島〜。お前も休憩か?」
「ちょっとな・・・」
がたいのいい同僚に、少しスペースをゆずり、紫煙をくゆらせた。
「めずらしいな。お前がシャツのボタン、全部とめてるとか」
「あ? ・・・っ!
おおおおお俺だって、身なりにはそれなりに気をつけてだな・・・!」
「おぉ? 怪しいな。さてはあれか。これだろ?」
「小指立てるな馬鹿! え、えっと犬に噛まれてだな」
「犬〜?」
「お、おう。しつけの悪い犬でな。俺に、噛み付いてきたんだ」
「・・・ふ〜ん。その犬、飼ってんのか?」
「いや、たまにふらっと俺の家にくるんだ。頭のかしこいやつで、ときどきジュネスにもいる」
「へぇ。うまいもん食ってんな。で、可愛いのか?」
「・・・可愛い、かな?」
「じゃ、俺も見つけてみようかな。独り身は寂しくてよ。
なんならそいつ、俺がひきとって、」

「だめだ」

「え?」
「俺が飼うことにしたから」
「そ、そうか?」
「おう」
「・・・まぁ独り身同士、がんばろうや」
灰皿に煙草を押しつけ、同僚は出ていった。

まったく。俺としたことが。
照れ隠しに煙草を消して、頭をかく。
くそ、足立の馬鹿野郎め。
はぁ、と熱っぽく息を吐いたところで、また喫煙室の扉が開いた。

「あ」

そいつと目があって、俺の顔は熱くなった。

「あああああ足立?」
「・・・」

背後で扉の鍵がしまった。何かいうまもなく、深くキスされる。
「ん・・・んんっ」
濃厚な水音に、体が震える。
ようやく唇がはなれたが、2人の唾液が糸をひいた。
「お、お前、ここをどこだと」
「車いきます?」
「馬鹿。勤務中だぞ!」
「だって、あんな告白されたら、ねぇ?」
「同意を求めるな! つかもっと違うことに目を向けろよ!?」
「僕、堂島さんを喜ばすことしか興味ないですから」
「う、うるさいやつだな。家にいれてやらんぞ」
「やですよ。無理矢理あがりますもん」
言葉の熱とは裏腹に、しがみつくように抱きしめられた。
「堂島さん・・・俺、一生、あなたからはなれませんから」
「・・・」
「あなたがいないと、俺・・・」
「うるせぇな」
「え?」

震えそうな声を必死にこらえて、俺は足立の髪をなでた。
「そんなに吠えなくても、逃がしたりしないからよ。
安心して、傍にいろ」
「・・・堂島さん」

泣きそうにゆがめた、犬の目元に口づけた。

「・・・それで相談なんだが、たまには俺にやらせ」
「嫌です」
「おまっ。わがままか!?』
「はは、気が向いたら千回に一回くらいは考えときます」

シャツの前をあけられ、昨日の情欲が再燃する。

上目遣いの足立が笑った。
新しいマーキングがほどこされていく。

「てめぇっ! くそ、覚えてろよ!」
「首輪つけます?」
「うっさい。黙って食え!」

「わん」





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































☆注意☆

この話は、千枝と雪子が男の子になっているパラレルです。
ついでに名前の呼び方もちょっと違います。
雪子は「雪」と呼ばれてます。
大丈夫な方は、どうぞ☆







***********************



部活のない日は、暇をもてあました男子が教室でたむろしていることが多い。
帰ろうとした俺を呼び止めた奴らも、そういう連中で、同じクラスの3人組だった。

「なぁ、里中って女子とキスしたことある?」
「は、はぁ!? 何いってんだお前!?」
「だってさぁ、俺らの周り、だーれも女子と付き合ってるやついねーし、
好きなやつの話とかあんましねーじゃん?
だからさぁ、俺らへの潤いと思って、いっちょネタ提供してよ」
「意味わかんねーし! 俺、カンフーの修行あるからもう行くぞ」
「ふーん。やっぱ里中でもそういう経験ないんだ」
「やっぱ女顔だからか?」

ゲラゲラと笑われて、こめかみがぴくっとした。
小さい頃から、女みたいな名前と女みたいな顔で、さんざん嫌な思いをしてきたのだ。
男なのに、男子から告白されたりナンパされたり、押し倒されそうになったりして最悪だった。
カンフーに憧れたのは、かっこいいのと、
そういうバカ共に鉄拳制裁できる手段として有効だと思ったからだ。
今は学ランがあるから、勘違いされることは減ったが、
私服で隣町をうろつこうものなら、未だに男から声がかかる。
本当に嫌で嫌でたまらない。
だから、自分にとって「女みたい」・「男らしくない」というキーワードは、屈辱的で許せないのだ。

「・・・おい、だれが女顔だって?」
「え? だってお前、なんか可愛いじゃん」
「可愛くねーし! 女子と付き合ったことあるし!」
「まじで!? じゃあキ、キスも・・・!」
「お、おう! そりゃまぁ・・・」
本当はキスする前に別れたんだけど・・・。

「じゃ、じゃあさ。どんなだった?」
「・・・そ、そりゃあ、まぁ、それなりだ」
『すげー!』

俺が口ごもるのを、いいように受け取ってくれたらしい。
密かにほっとした。

「じゃ、じゃあさ、やってみてくれよ」
「・・・は?」
「いや、俺にはしなくていいからな! え、え〜っと、手とかに?」
「はぁ!? 何いってんだお前!?」
「そうだよ! 俺らはエロを求めてんだよ! 里中〜一生のお願い! 
自分の手でいいから、エロくキスしてみてくれぇえええ!」
「里中大明神! まじお願い! かわいそうな俺らを救うと思って!」
「嫌に決まってんだろ! 俺、帰るし!」
「そこをなんとか!」
「嫌だったら嫌だ! そこどけって!」
「ビフテキおごるから!」
「何いって・・・」
「愛家と総菜大学で好きなだけ食っていいから!」
「・・・」
「ホームランバーもつける!」
『お願いしますぅうう!』

「・・・わかった」

『よっしゃぁあああああ!』

天に拳を突き出す3バカに、早くも後悔してきた。
クラスに他のやつらいないことが、せめてもの救い?

「い、いいか。1回しかしないからな」
『イエッサー!』
「お前ら、息あいすぎ・・・」

3人に囲まれて、急に緊張してきた。

ど、どうしよう。
キスしたことないのに・・・。

ちら、と見ると、こいつら目が血走ってすげー鼻息荒い。
き、きもっ。
今さら止めるとかいえないっ。

も、もうどうにでもなれ!
できるだけ口もとを隠すようにして、おそるおそる手を近づけた。
ほどなくおとずれた柔らかい感触が、妙に気恥ずかしくて、かぁっと顔が赤くなる。
ごくり、と喉がなる音が聞こえた。


「何してんだお前ら」

冷たい声とともに、悲鳴があがった。

「千枝、大丈夫か?」
「雪!? え、お前どうして・・・」

急に現れた幼なじみに、俺は呆然とした。
3人とも床に沈めた雪は、級友達に怜悧な視線を向けた。
「二度と千枝に近づくな。次、同じようなことがあったら容赦しない」
「誤解だって! これは・・・!」
「・・・千枝、行くぞ」

俺の手を掴んで引きずるように歩き出した。







「千枝、大丈夫だった?」
屋上の扉を閉めて、ようやく雪が俺の手を離した。
「へ、へーき」
「よかった・・・」
雪が微笑んで、俺もほっとする。
「あ、あのな雪。さっきのは遊びだったんだよ。
だから何にもされてねーし、何にもなかったからな」
「遊び?」
「あ、え、その。だから何でもねーからな! ははは」
「詳しく説明して」
「え」
「詳しく」
詰め寄られて、俺は冷や汗が出た。
普段、雪は優しいが、一度こうと決めたら頑として譲らない。
しかも、怒らせたら非常に恐い。恐ろしい。
特に俺のこととなると、自分のこと以上に怒り狂う傾向がある。
そして今、間違いなく怒っている。
きちんと説明しないと、どうなるかわからない。
しどろもどろになりながら、どうにか口を開いた。

「えっと、その、実は、あいつらと話してて」
「・・・」
「なんかエロい話題をくれって言われて」
「・・・」
「俺、嫌だっていったんだけど、お願いだからちょっと実演してくれって」
「何を」
「えっと、キ、キ、ス、を」
「・・・」
「肉いっぱいおごってくれるっていわれて」
「で、キスしたと」
「・・・」
「返事は?」
「あ、はい」
「・・・」
「あ、あの」
「・・・」
「雪?」
「じゃあ、お前、肉おごられたらキスするのか」
「そんなわけねーじゃん! あれはちょっと、その、勢いで・・・!」
「・・・あんなことしやがって」
「だ、だから」
「あんな奴らの前で」
「それは反省して」
「頬染めて、目ぇ潤ませて」
「そりゃ、気持ち悪かったかもしれないけどさ」

「お前、一々やらしいんだよ」
「は?」


不意に、いい匂いがした。
目の前がぼやける。
え? え? ちょっ、え?
おおおおお俺、雪とキスしてる!?
何度も角度を変えて、唇を吸われる。
「・・・ふぁ、あっ、」
自分の変な声に、はっとして、雪の胸を突いた。

荒い息をつきながら、信じられない気持ちで幼なじみを見た。
なんで、雪、なんで俺に。


うろたえる俺に、ぽつりと雪がつぶやいた。
「ずっと・・・こうしたかったんだ」
きれいな瞳が、苦しそうに俺を見る。
「千枝のこと、好きだ」
そっと差し伸べられた手を、俺は振り払った。

相手がよろけた拍子に、転げるように逃げ去る。


頭の中がぐちゃぐちゃで、心臓が張り裂けそうで、
ただただ走った。




→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































さっきまで舐められていた秘肉に、硬くなったものをゆっくりねじ込まれていく。

「い、やぁ、むり、・・・っ!」
「大丈夫ですから」

なだめるように背中に口づけられて、ひくんと体が震える。
四つん這いにされているだけでも屈辱的なのに、腰を高く抱えられて羞恥に顔が熱くなる。
毎回、絶対入らないと首をふるのに、僕の意志とは無関係に体は少年のことを素直に聞き入れ、
中へ中へと誘い入れいく。

「うっ、あ、やぁ」
それまでじわじわと入り込んでいたものが、ぐっと奥まで突き入れられる。
傷みと圧迫感よりも、快感に体が震えて。
それを認めたくなくて、シーツを噛んだ。
「・・・動きますよ」
同意もしていないのに、小刻みに腰を揺らされる。
いいところを掠めるように突かれて、目の前がチカチカする。
シーツを握って、どうにかやりすごそうとするが、射精感が高まるばかり。

「声、出してくださいよ」
「・・・っ」
「意地っ張り」
「・・・え、うわっ!?」

入れたまま体を反転させられる。
ぐりっと奥を強くすられて、しびれるような快感が走る。
休む間もなく気持ちいいところばかり突かれて、ぽろぽろと涙が出た。
「も、やぁっ・・・」
深く出し入れされて、
「も、イく・・・」
「だめです」
根元を強く握られて、思わず嬌声をあげた。
「な、んで」

震えながら少年の方を見ると、腰使いとは裏腹に、優しく額にキスされた。

「もう少し我慢して」
「あ、んっ」
「足立さん、感度いいから、あんまりイきすぎると辛いでしょ?
今日は、あなたの中に長く入っていたいから・・・」
太腿を大きく開かされ、さらに揺さぶられる。

だったら今すぐ抜いて、やめてくれ。
そういいたいのに、口を開けば喘ぎが漏れそうで、指を噛んだ。
それすら許さないと、口の中に長い指が入り、
歯列をなぞり、舌をなぶってくる。
のみこめない唾液が口から伝い、だらだらと首筋を汚していく。
どこもかもが気持ちよくて、辛い。

一際強く突かれて、戒められていた指を離される。
白濁が飛び散り、快感にびくびくと四肢を震わせた。

「はぁ、はぁ、・・・やぁっ!」
射精したばかりの敏感なペニスを弄られた。
抵抗しかけた指先はひとまとめにされて、頭の上に押さえ込まれる。
ぐちゅぐちゅと粘度を増すのに呼応して、少年のものも僕の中で大きさを増す。
溺れるように喘ぐ口を舐められて、
僕は自分からその舌を吸った。








→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































「足立さん、今日はやけに積極的ですね。
自分から俺の膝に乗ってくるなんて。何かあったんですか。
・・・いいんですよ。なにもいわなくても。
俺はあなたの味方ですから、怖がらないで。
・・・震えてる。大丈夫。今日は朝まで離さないから。
ふふ、足立さんはあったかいなぁ。
肌も気持ちいい。
ちょっ。爪たてるんなら、服脱いでからにしてください。
くすぐったいなぁ。
そんなにしがみつかなくても、俺は逃げませんよ。
あ、肩は・・・!」

「うっせぇえええええええ!!!」
飛んできた単行本をひょいとよけた。
「なんですか足立さん。今、俺は足立さんと遊ぶのに忙しいんですけど」
「うっさいよ! まぎらわしいよ! 人の名前を猫につけるな!」
「俺がこの仔を何て呼ぼうが自由じゃないですか。ね、足立さん」
喉を撫でてもらって、猫「足立さん」は、気持ちよさそうに躰を預ける。

「『足立さん』も『足立さん』みたいに、もっと甘えてくれたらいいのになぁ。
ねぇ『足立さん』」
「・・・僕はただ少ない休日を、ゆっくり過ごしたいだけなんだよ」
「だから、『足立さん』には何もしてないじゃないですか。
こうやって猫の『足立さん』とイチャイチャしてるだけで、
もうこれは『足立さん』に褒めてもらうべきレベルだと思うんですけど『足立さん』。
そんなところで寝転がってないで『足立さん』」
「すげぇ紛らわしい上に苛々するんだけど。
だいたい僕のマンション、ペットだめだからね!
本当にその仔といっしょに帰って」
「『足立さん』が『足立さん』に意地悪を・・・! これは新しい!」
「や、やらしく言うな! 本当にだめなんだって!
てか君、僕の家に猫連れてきて本当、どういう魂胆?」
「え、2匹連れて来て、俺x『足立さん』x『足立さん』とか、
『俺』x『足立さん』x『堂島さん』とか、そういうプレイをご所望で?」
「・・・出てく」
「嫌です! 『足立さん』、『足立さん』を止めて!」
「うぜぇえええ! こっち来んな!」
「行け! 『足立さん』! 『足立さん』を引っ捕えろ!」
「うわぁああああああ! 来るなぁあああ!」
「とう!」
逃げようとした『足立さん』の足を払って、ベッドに押し倒せば、
すかさず猫の『足立さん』が『足立さん』の胸におすわりする。
「くっ・・・卑怯だよ!」
「へっへっへっへっ。『足立さん』が『足立さん』の上に乗るとか、やらしいなぁ」
「まじやだこいつ」
「とかいいつつ、『足立さん』、ちょっと興奮してるでしょ」
「・・・」
「ね?」

ぐるぐると唸って『足立さん』は、俺の肩に噛み付いた。




→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































後ろから口づけられたとき、こいつも同じようなことを考えていたのだとわかった。


甥は足立のことが好きで、俺は千里のことを忘れられなかった。
足立が捕まった後、想い人に手を伸ばしても届かないという共感めいた感情が、
互いを家族以上に近づけた。
2人とも肌が恋しかった。
それ以上に心と躰、両方の寂しさには耐えられなかった。
秘密の関係を築くにはちょうどよく、唯一の相手になっていった。


相手を抱きながら、違う相手の面影を重ね、
抱かれながら似た仕草を見つけ、うれしくて苦しすぎて、
慟哭のかわりに相手の躰にすがる。


熱っぽい吐息とは裏腹に、さらりとした感触の髪を撫でて囁いた。


「来週、面会できそうだ」
「・・・そうですか」
「お前、行けそうか?」

甥の手が俺のものを強く握る。
会話だけで興奮したのだろう。
目を閉じて、俺のものを、舐め始めた。
俺も躰をずらし、甥のものを口に招き入れる。
瞼の裏で、違う相手を想いながら。
たぶん、こいつも同じように。


「・・・っ」

掠れた声で甥が名前を呼んだ瞬間、
口内のものが、ぐっとふくれあがった。


互いの口に射精して、貪るようにそのまま口づけあった。
舌でかき混ぜて、誰のものかわからない蜜を嚥下していく。

目を閉じると、昏い闇の中、一瞬だけあいつが見えて。
追うように、深く舌をもぐらせた。





合図は、背中へのキス。
想い人にされるように。
想い人にするように。
目を閉じて、それは始まる。




→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************






























































































































そりゃ先輩のことは好きだけど、あこがれっつーか、恩人として尊敬してるっつーかそういう気持ちで、キスしてぇとかさわりてぇとかそういうもんじゃねぇよ。
すげぇとかかっこいいとか、そういうのって恋愛じゃなくても感じることだろ。
だから俺が先輩を遊びに誘っても、部屋ん中あがらせてもらっても、
やましいことなんて全然ねぇし、今日は勉強見てもらうし。
疑うやつがいるなら、目の前で先輩と相撲のぶつかり稽古してもいいくらいだ。
男らしくプロレス技の練習でもいい。
おい、ベッドの上のプロレスとかいいやがった奴は出てこいこらぁ!

「完二、座らないのか?」
「あん!? え、あ、すんません先輩。部屋で1人って、ちょっと落ち着かなくって」
「お菓子が気に入らなくて、怒ってるのかと思った」
「そんなことないっす。先輩からもらったもんだったら何でも食べるっす!」
「はは、かっこいいな」
扉をしめた先輩といっしょに、俺も床に座った。

「・・・ここ、静かっすねぇ」
「まぁな。畑もあるし、隣の家からも離れてる」
「うらやましいっす。うち、車の音がうるさくて、
集中したくても、できないことがあるんすよね。
・・・勉強以外っすけど」
教科書を重い荷物のように取り出して、溜息を吐いた。
「赤点なんてだれが決めたんすかね。俺ぁ、この教科の仕事するわけでもねぇし、
元気で生きてりゃ、赤だろうが金だろうが何でもいいんじゃないっすか?」
「う〜ん、数字が一番わかりやすい査定基準だし、
目の前の課題に対してどのくらい誠実な行動をとれるかっていう社会的資質を
見てるんじゃないかな? 肯定的な一部の考えとして」
「えっと、先輩、俺にもわかるようにいってもらえますか?」
「追試まで、いっしょにがんばろう」
「うっす! 恩にきるっす!」

先輩の丁寧な説明もあって、どうにか1時間は勉強した。

「休憩するか?」
「・・・お願いします」
ほつれた糸くずみたいに、くにゃくにゃになって机につっぷす。
「・・・今すぐチャリぶっ飛ばしたいっす」
ん〜と伸びをして、ソファにもたれかかった。
「そういえば気になってたんだけど・・・」
「なんすか?」
「そのペンダント、よくしてるな」
「あぁこれっすか? 何となく気に入って買ったんすけど。
中に写真いれられるらしいっすね。まぁいれるあてもないんすけど」
「願掛けも?」
「してないっすね」

頭の後ろで手を組んで、俺は先輩を見た。
「先輩はしないんすか?」
「ん〜そういえば、ないな。
ちょっと見せてもらっていいか?」
「いいっすよ」

首から外そうとした俺を制して、先輩の指が俺のロケットをつまんだ。
興味深そうに、いじったり、中を見たりする。
鎖が微かに肌をすって、そのくすぐったさが、ちょっと恥ずかしいというか・・・。

も、もういいんじゃね? と思い始めて視線をきょろきょろさせると、
上目遣いの先輩と目があった。

見つめ合ったまま、つまんでいたペンダントを先輩は自分の口に近づけて、
キス、した。

え?

「えぇえええええええええ!?」

先輩を突き飛ばした。

「ちょっ、先輩、俺はそっちの趣味はないっつーか、
いや、先輩の頼みなら何でもするつもりっすけど、
え!? 先輩ってそっちじゃなかったすよね、つーか、」
「落ち着け、完二」
「これが落ち着いてられるか!」
「女子の料理を思い出せ」
「・・・うっす」
「よし・・・」

2人とも冷静になった。

「あの、先輩、さっきのは・・・」
先輩の目とかまつげとか、唇がふれて離れていくところとか何度もリプレイされて、また頭ん中ぐちゃぐちゃになりそうだ。
「あれは、・・・おまじないだよ」
「はぁ?」
「よくいうだろ? 幸せになるとか願いごとが叶うとか。
このペンダントをさわってるうちに思い出して、
そしたら、かってに指が動いたんだ・・・」
「そ、そうだったんすか・・・」
「誤解させて悪かった」
「いや、俺も大げさに騒ぎすぎたっつーか・・・。
俺、まだ、小さなことに一々反応しすぎなんすよね。
なおそうとしてるんすけど、堂々とできないっつーか、
かっこ悪いっすね・・・」
「完二はかっこいいよ」
「・・・そうっすか?」
「あぁ、かっこいいさ。ペルソナを手に入れてからは特にな。
でも、1人で突っ走るところがあるから、
なにか手助けになれることがあったらと思ってたんだ。
・・・もっと口に出していえばよかったんだけど。ごめんな」
「いや、そんなことないっす! 先輩が俺のこと思っててくれたってだけで、
巽完二、百人力っす!」
「そうか?」
「うっす! だからもう、謝らないでください!
俺、先輩に頼られるくらい、でかい男になりますから!」
「あぁ、俺も負けない」
「へへっ」
「じゃあ。続き、する?」
「おっしゃあ! かかってこいやぁ!」

そのとき、携帯のコール音がなった。
「ちょっとすんません。
・・・なんすか、花村先輩」
「あのさ、みんなでフードコートに集まらないかっていってんだけど、
お前来ない?」
「あ〜今、先輩んとこで勉強教えてもらってるんすよ」
「え、相棒そこに、いんの? いっといてくれよ〜、携帯通じないって」

「・・・充電なくなってる」

「らしいっすよ」
「あ〜わかった。じゃあな、来れそうなら来いよ」
「う〜っす」
「・・・・・・・・・完二」
「なんすか?」
「いちおう、確認のためにいっとくけどな・・・」
「・・・花村先輩?」
「相棒、襲うなよ」
「はぁ!? なにいってんだこらぁ!
なんにもねーって!」
「ほんとか? アヤマチとかおこってない?」
「ったりまえだろ!? 俺と先輩の間に、何かあるわけ・・・!?」

ペンダントがゆれる。

「・・・・・・完二? 完二〜?」
「・・・だ、だから何もないっすからね! 切るぞ!」

はぁはぁと息を荒げながら、電源を切った。


「陽介、なんて?」
「えっとフードコートに集まらないかって」

先輩が教科書をめくる。

「ここまで解けたら、行くか?」
「そうっすね。でも、これとこれ、難しくないっすか?」
「願掛け、もう1回しとくか?」
それはつまり、ペンダントにキ・・・。

「・・・っ!!! あ・ん・た・らぁあああああ!!!」
「完二、過剰反応」
「うっ・・・」
「シャーペン持て」
「・・・うっす」
「おて」
「は?」
「何でもない。・・・さ、やろうか」
「う、うっす」

腑に落ちないところもあったが、待ち受ける甘いえさのために、必死に説明を聞いた。
シャーペンを動かしながら、なんとなく、
この人には一生敵わないような気がした。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************






























































































































マグカップを持っているとき、
酒を飲んで土手を歩いているとき、
2人きりでいるとき、
ふとしたきっかけで足立に不意をつかれ、ネクタイを外すはめになる。


今日だってそうだ。
捜査資料のことが気になるからと家に呼んだのに、
名前を呼ばれてふりむけば、深く舌をねじこまれる。
そのまま台所をつっきって、ソファに押し倒されて。

書類整理は苦手なくせに、人の服を脱がすのは得意で本当に困る。

「お前、器用なのか不器用なのかわからんな・・・」
「褒め言葉ですか?」

応えようとした唇を、また塞がれる。
互いのネクタイを床におとし、快感を拾いあげていく。
何度も舌をからめた後、脱がそうとする手を押し退けて、かすれた声でささやいた。


「今日は、俺にやらせろよ」
「えー」
「いっつも俺ばっかり下ってことは、ねぇだろ」
「えー、やだー」
「お前はガキかっ!?」
「でも〜」
「この前、仕事フォローしてやったよな?」
「えぇ!? そんなのいっつものことじゃないっすか!?」
「だから、たまには俺の言い分を聞いても罰は当たらんだろ」
「・・・えー、・・・でもー、うー、まぁ、
・・・・・・・・・ちょっとだけですよ」

唇をとがらす足立の細い腕をとってソファに座らせ、俺は床に膝をついた。


落ち着かない様子の足立を見て、さてどうしてやろうかとほくそ笑む。

投げ出された片足を両手で持ち、白い靴下を、ゆっくり脱がした。
見えてきたのは、男のわりに、白く繊細な足だ。
指もほっそりしていて、全体的にさわるとやわらかい。
かかとの後ろが桜桃のように色づいているのは外回りが続いたからだろう。
俺と違って、頭で人生を渡ってきた足だ。
すべらかで、唇で感触をたしかめると、そのきめ細かさがはっきりわかる。
うまそうな足だ。
そのまま、口にいれた。

足立はぴくりと震えたが、さらに深く口内にふくんだ。


先端部分を舌でちろちろと刺激し、爪の形をなぞっていく。

フェラチオをしているように、
裏まで舐め、しゃぶり、ときおり吸ってやる。

口にくわえて、ゆっくり出し入れしてやると、足指が舌の上を不規則にタップして、
足立が感じているのがわかる。
上目遣いで見ると、足立は真っ赤になって喘ぎをこらえていた。
なんだ、こいつ。
感じやすいんじゃねぇか。

もっと弄ってやりたくなって、
目を合わせたまま、一本ずつしゃぶってやる。
「あっ・・・」
こらえきれなかった喘ぎに、足立は自分の顔を手で隠した。
感じているくせに必死に声を抑えている表情が、たまらなくそそる。
太腿を押して足を開かせ、服の上から膨らんできた部分に舌をはわせた。


「うっ・・・あ、んっ」

しつこく舐めると、足立のにおいがしてきて、
俺もさらに興奮する。

右手で足立のベルトを抜いて、屹ちあがっているものを掴み、
なれない左手は自分のものを取り出し、しごいた。
にちゃにちゃと水音がする。
2人の欲望が獰猛に唸る。
高まる射精感に、両手の親指で先端をすりあげた。

「くっ・・・」
「あぁっ!」

放たれたもので両手が濡れて。
目の前がチカチカして、足立の太腿にもたれかかる。

はぁはぁと荒い息を吐いていると、足立の手が俺の頬にふれてきた。
いつもは冷たい指先が熱を帯びている。


「次は僕の番です」


腕をとられ、今度は俺がソファに座らされる。
そのまま足をひっぱられ、足立の目の前に股を突き出したような格好にされる。
恥ずかしすぎる体位に、俺は顔が熱くなった。
「お、おい! 俺の番は終わってないぞ!?」
抵抗しようとしたが、ねちゃついた両手に逡巡している間に、
下着ごとズボンを脱がされてしまった。

「ちょっと待、・・・んっ!」

射精したばかりのそれを握られ、俺は息を詰めた。
そんな俺を、足立はいつものように、いや、いつも以上にいやらしく見てくる。


やばい。
こいつ、何かたくらんでやがる。
俺がいやがることをわざとささやき、どんな手を使ってでもそれをさせる気だ。
「足立、ちょっ、ちょっと休憩を・・・」
「はは、冗談」
先端を舐められて、背筋がぴくりと震える。
えさを啄むように、刺激されて、抵抗なんてできなくなる。

あぁ、もうだめだ。
足立に決められたほの暗い未来を、ただ待つしかない。

俺の足を抱えながら、足立はとっても楽しそうに笑った。


「ねぇ堂島さん。
あんたの精液まみれの手で、自分のお尻、ほぐしてみせて?」






→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































「足立さん」
「やだ」
「まだ何もいってないんですけど。ちょっとお願いが」
「やだよ。君のお願いってろくなことないんだもん」

ぽりぽりと煎餅を食べながら、テレビを見続ける僕に、
隣に座っている甥っ子くんが、不満そうに顔を近づけてくる。

「キスしていいですか?」
「ぶっ。そんなこと一々いわないでよ!」
「じゃあ勝手にしちゃっていいんですね」
「しなくていいしなくていい。むしろ離れて」
「・・・・・・・・・。お茶淹れ直してきます」
席を外した少年に、やれやれと溜息を吐いた。

本当、あの少年は世話が焼ける。
盛りのついた犬猫じゃるまいし、毎回毎回べたべたするなっつーの。
おかげで、こっちは君が近くに寄るだけで自然と躰がうずくようになって。
それを抑えるのに、毎回必死だっつーの。

震えそうな体をつねり、熱っぽい息を吐く。

「空気交換でもするか・・・」

立ち上がって、窓を開ける。
カーテンを泳がす緑の風に、気分がすっとする。
都会ではほとんど意識することがなかった感覚だ。
もしここに来なければ。
このゆったりとした暮らしも。
あの少年に出会うことも。


「コップ置いときますよ」
「・・・え。あ、ありがと」

大人しくソファに座った少年を目で追った。
静かにしていれば、頭がよくて運動神経もよい美形男子なんだが。
あ、なんかむかついてきた。

「あの・・・?」
「何でもないよ」

立ったまま後ろからもたれかかり、少年の肩に顎を乗せる。

「・・・地味に突き刺さって痛いです」
「うっさいなー。テレビでも観てなよ。
僕、今日は君のお願いなんて聞いてやらないんだから」
へへん、と意地悪く笑ってやる。
たまには困ればいいのだ。
何でも自分の思う通りになると思うなよ!

少年の動きを封じたまま、
その白い耳に
嫌がらせのキスをしてやった。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************































































































































高台から見える紅葉の色が美しいけれど言葉にならないように、
久慈川さんのまとう空気感につける名前を僕は知らなかった。
光の泡沫がその腕から広がるようであり、
織りなす声の響きは甘く高く風にのっていった。

言葉をかけようとして、彼女を賛辞する語彙の少なさに逡巡し、
とにかく大きく拍手することで補った。

「すばらしいです、久慈川さん」
「へへーっ! ありがと!
・・・今日はごめんね。演劇の練習につけあわせちゃって」
「いいえ。とても新鮮ですし、知識や経験の幅を広げるのも
優秀な探偵になる秘訣です。それに、」
「それに?」
「門外漢の僕がいうのもなんですが、とても、その、すてきです」
「そんなに褒められたら調子のっちゃうな」

台本をりせに渡し、直斗は足を組み替えた。
「もう一度やりますか?」
「ん〜、そうだね。今度は違う役をやってみようかな。
直斗くん、手伝ってくれる?」
「え?」
「私、男役やるから、直斗くん、お姫様の役、やってくれない?」
「え、えぇえええええ!?
無理ですよ! 僕、お芝居なんて・・・!」

「大丈夫だって! 直斗くん、声きれいだし姿勢もいいし」
「そ、そんなこといったって・・・!」
「いいから。ほら、立って!」
両手をひかれて、椅子から立ち上がる。
「大丈夫! 直斗くんならできるよ」
彼女の笑顔を見ると、ふしぎと勇気がわいてきた。

「ね。ここに立って! はい、台本。よろしくね」


りせが、後ろを向き、息を整える。
振り返ったとき、その顔つきは変わっていた。


姫に焦がれ、悩める青年の顔だ。
潤んだ瞳が、狂おしくゆれている。


緊張する僕の傍にひざまずき、夢のような台詞をつぶやいた。

「・・・っ」
「・・・姫?」
宝物にふれるかのように僕の手をとり、焦がれて震える唇を寄せた。
「あっ、あ、うわっ」
「私の罪深き唇をお許しください」

もう一度、手の甲にふれられて上目遣いに見られて。
僕の頬はさらに熱くなった。


「ふふっ」
「・・・え?」
「はははー! 直斗くん、可愛い〜!」
「わわっ!」

ぎゅっと抱きつかれた。
「ちょっ。久慈川さん、どこ触って・・・!」
「だって〜直斗くんが可愛すぎるのがいけないんでしょ〜?」
「わけのわからないことをいってないで・・・!

「あ〜あ、私が男だったら、直斗くんのこと放っておかないのにな〜」

「え?」
「ははっ! 腰さわっちゃえ! えいっ!」
「ちょっ! さわらないでくださいよ!」
「直斗くん、ほっそ〜い! ちゃんと食べてる?」
「く、久慈川さんの方が細いですよ」
「ん〜、いいにおいがする〜」
「も、もう放して・・・!」

手足をばたばたさせると、ようやく解放された。

「も、もう、冗談はやめてくださいよ」
「へへっ。たまには刺激的でしょ?」
「心臓に悪いです」

深い溜息に、りせが「ごめんごめん」と肩をたたいてきた。
「今日は、帰ろっか」
「・・・そうですね」


ひどい倦怠感と荷物を持って丘をおりた。
途中でりせが飴を2つくれた。

「直斗くん、お姫様役、にあってたよ」
「そ、そんなことは」
「今度は恋人の役、やってほしいなぁ」
「・・・勘弁してください」
「職業は名探偵でいいよ?」


「・・・・・・・・・」
「ね?」
「・・・・・・・・・」
「直斗くん?」
「・・・考えておきます」


もらった飴の包み紙を1つ開いた。
カラフルなそれを舌でとかすと、しらない甘酸っぱさが広がった。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************































































































































「堂島さん、どーうーじーまーさんってばー!」
「んが? ・・・ぷすー」
「ぷすーじゃないっすよ。何寝てんすか」
「俺の家で寝るのはとうぜんだー」
「・・・・・・・・・。
寝たよ。かんぺき、寝たよこの人」
床で大の字の堂島に、溜息が出る。
今日も、おあずけですかー?

「今日は、するつもりで家に来たんだけどな・・・」

酒をのませすぎたか。

未練たらしく、堂島の腹のあたりに顎をのせる。
「どーうーじーまーさーん・・・」
堂島のにおいを吸い込み、ネクタイに吹きかける。
「・・・っ」
かすかに堂島の息があがる。

ちょっと面白くなって、シャツに息をふきかける。
波打つ灰色に、ぞくりとして、下着ごと上にずらした。
日焼けした肌が見える。
腕よりは少し白いが、いたって健康的だ。
そのくせ、へそだけ妙にいやらしくて、思わず口づけた。

堂島が軽く声をあげた。

「はは、寝てても感じちゃうんだ?」

ちゅっ、と音をたてて、今度は舌をのばす。
円周をなぞって、溝に掘り進める。

「ん・・・っ、あ、」
「いつもより感度いい〜。
もしかして普段は我慢してるのかな?
はは、ここだけでいけるか試してみる?」
「あ、・・・ん」
「僕の理性がそれまでもつかな?」

堂島にまたがり、ベルトを抜く。
鼻歌を歌いながら、顔をうずめていった。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































いま、クマはセンセイの家に住んでいます。
ナナちゃんたちは病院にいるので、センセイとふたりっきりです。
ドキドキするクマね〜!
でもセンセイは昼は学校で夜はアルバイトで、いそがしそう。
クマだって、ごはんを食べたり昼寝したりジュネスに行ったりいそがしいクマよ?
夜はすぐ眠くなるし、気づいたら朝日がのぼってるし。
本当に1日は早いクマ。

そんなクマだけど、今日は布団に入っても楽しい夢がやってこないクマ。

しばらくごろごろしてたけど、うんしょと起きて、
センセイの部屋の前まで行った。
「センセェ・・・」
先に中から扉が開いた。
「どうした?」
「・・・センセイ。
ちょっとお話していい?」

部屋に入るとヨースケの部屋とは違うにおいがした。
女の子たちとも違うけど、とってもいいにおいクマ。
ちょっと疲れたようなにおいもするけど、センセイ大丈夫?
「センセイ寝てた?」
「いや、まだだ。クマは寝てたのか?」
「うん。でも寝れなくて」
ソファに座って、ひざを抱える。
隣に座ったセンセイが、ゆっくりうなずく。
何を話そうかドキドキしたけど、
センセイの目を見ると、少しずつ落ち着いてきた。
「センセイは眠れないとき、ある?」
「ときどきあるよ」
「そうクマか〜。センセイも悩めるお年頃なのね」
センセイがほほえむ。
クマも笑ったけど、急に不安になって下を向いた。

「クマ、みんなにきらわれてないかなぁ」
「どうして?」
「だってクマの世界で事件が起こってるから・・・」
「責任、感じてるのか?」
こくん、とうなずいた。
「だったら俺にも責任がある」
「え?」
「クマを悲しませてるのは、俺たちの世界だ。
だったら俺たちは、クマに嫌われてるんだろうな・・・」
「そんなことないクマよ!
クマはセンセイも、みんなも大好きクマよ!」
「本当に?」
「本当クマ!」
「よかった」
センセイがほほえむ。
「俺もクマが好きだよ。もちろんみんなも」
髪をなでられて、かぁっと顔が熱くなった。
センセイは不思議な人クマ。
クマの心をあったかくしてくれる。

「クマ。1人の力でできることには限界がある。
俺だってリーダーと呼ばれてるけど、できないこともたくさんあるし、
万能じゃない。失敗だってする。悩みもある。
だからこれからも俺たちを助けてほしい。
クマが困っているときは、俺たちも助けるから」
「センセェ・・・」
「クマが悲しい顔で悩んでると、俺たちもつらいんだ。
泣いてもいいけど、つらいことや悲しいことは
ずっと1人で抱え込まないでほしい。
もしいいたくないことがあっても、
俺たちがそばにいることは忘れないで」

「・・・センセイは悲しいことがあるクマか?」
「ない、といいたいところだけど・・・あるよ」
「どんなこと?」
「事件のこともそうだし、
菜々子や叔父さんの入院も気になるし・・・」
「それからそれから?」

顔を近づけると、センセイはちょっと唸って唇に人差指をつけた。

「ないしょ」
「えー!? センセイしどい〜。
じゃあヒントちょーだい! ヒント!」
「もう寝る時間だぞ?」
「ちょっとだけ! ね?」
「うーん。そうだな・・・」

センセイは悩むポーズをとった。

「前は青。今は黄色の相手のことかな」
「え〜? そんな人いたクマか?」
「さ。寝てくれ」
「ん〜余計、眠れないクマ・・・」
「クマへの宿題だ」
「う〜、宿題って大変なのね」
くすくすと笑って立ち上がったセンセイを、じぃっと見た。
「センセイ・・・」
「ん?」
「今日だけ、・・・ここで寝ていい?」

寝転がったセンセイに手招きされて、
クマはセンセイの上にダイブした。
「クマ・・・痛い」
「えへへ。このお布団、センセイのにおいがする〜」
「電気消すぞ」
「うふふ。センセイの部屋で初めての夜クマね〜」
「クマ、暴れない」
「ん〜〜〜わかったクマ」
もっともっと話したかったけど、布団とセンセイの体温があったかくて、
だんだん眠くなってきた。

「せんせぇ・・・好き」
「俺も」
「センセイ・・・ありがと」

まぶたに柔らかい感触がふれた。
くすぐったくて、センセイの胸に頭をすりつけた。

今日の夢はなんだろな〜。






→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************






























































































































「はい。ビフテキコロッケ。これ、お釣りね」
「どうも〜」

へらりと笑って、袋を受け取った。
これで冷蔵庫のキャベツをつければ夕飯は完璧だろう。
小腹がすいたので、歩きながら1つ取り出す。
揚げたてに勝るものなし。
歯の間でざくっといい音がする。
これでビールがあったら文句いいません。
「あ〜早く帰りたいなぁ」

木陰で時間をつぶすかと神社の方を見れば、境内に見覚えのある子どもがいた。

あれ。確か、堂島さんとこの娘さんだよね。

関わったら面倒なので、距離を置いて観察する。
菜々子以外にも同じくらいの背丈の小学生が何人かいる。
女子2人に、男子1人。
中でも気の強そうな女の子が、やんちゃそうな男の子にまくしたてている。


「なくしたってどういうことよ!?」
「だから、他の奴らと遊んでたら、どっかいったんだって!」
「どっかってどこよ!」
「わかんねーよ! だから探してんだろ!」
「本気で探してるの? 本当はこわしちゃったんじゃない!?」
「んだとー!?」

「やめてよ2人とも!」

菜々子が叫んだ。


「まきちゃんがすっごく心配してくれてるのも、
あつしくんが一生懸命探してるのも菜々子わかってるから。
けんか、しないで」

しん、とその場が静まりかえる。

「で、でも、あの編みぐるみ、菜々子ちゃん大切にしてたでしょ!」
食い下がる女子に、菜々子はにこっと笑った。
「うん。だから、明日もがんばって探すんだ!
もう暗くなってるし、今日はみんな帰ろ。遅くまで探してくれてありがとう!」

「菜々子ちゃん・・・」
「堂島・・・ごめん」
「ううん。いいよ。・・・明日、手伝ってくれる?」
「そ、そりゃもちろん」
「ありがと! あ、そうだ。あつしくん、今日はお母さんのお手伝いするんじゃなかった?」
「あ! やべっ! 悪い! もう俺帰るわ!」
「うん! じゃあみんな、バイバ〜イ!」

菜々子が手を振り、その場は解散になった。



僕は小学生たちとぶつからないように、こっそり植え込みに隠れた。
ふ〜ん、菜々子ちゃん大人だねぇ。
でもあの年で、いい子すぎるのもねぇ。
指についた衣をぺろっと舐めて、よっこいせと立ち上がろうとしたのだが、
また小さな足音が聞こえてきて、慌ててしゃがみこんだ。

「ん?」

菜々子だ。
周りを気にしながら、境内に戻っていく。
だれもいないのを確認して、草むらを探し始めたようだ。


あ〜、なるほど。
自分だけで探すんだ。
みんなに迷惑がかからないように?
友達のために?
いい子ってのは大変だねぇ。


ま、僕には関係ないけど。
静かに立ち上がって、背を向けた。

1歩。
2歩。
3歩。
3.9歩。


・・・くそっ。
なんだよ。
柄じゃないのに。


マイナス10.1歩。


「菜々子ちゃん」
「え!? あ、足立さん?」
「探してない場所言って」

むすっとした顔で、菜々子のそばにしゃがみこむ。
「編みぐるみ、探すんでしょ?」

きょとんとしていた顔が、みるみるうちに輝きを増す。
スーツの袖をまくりながら、堂島さんの拳を思い出して、ぶるっと震えた。








「ごめん。結局、見つからなかったね」
「ううん。足立さん、ありがとう!」
「どういたしまして。ま、これでもおまわりさんだからね!」
「うん! またお願いします! おまわりさん!」
「はは、今度は頭脳プレーができそうなのを頼むよ」

河川敷まで歩いてきたところで、菜々子がふと黙り込んだ。
「お兄ちゃん、怒るかなぁ」
「え、どうして?」
「なくなった編みぐるみ、お兄ちゃんがくれたの。だから・・・」
しょんぼりした菜々子に、なんとなく理解する。
友達への配慮だけじゃなくて、大好きなお兄ちゃんからもらったものをなくしてしまったから、あんなに必死だったんだ。
「ん〜でも、ないものはないしねぇ・・・」
ますます落ち込む菜々子に、「まぁ大丈夫だって」と我ながらフォローになってない言葉をはいた。



「ーーー菜々子!」
「あ、お兄ちゃん」
向こう側から、堂島さんの甥っ子が走って来た。
僕に軽く会釈して、菜々子の方を見る。
「遅かったから心配したよ」
「ご、ごめんなさい」
「何してたんだ?」
「えっと、その・・・」


「僕のペンを探してたんだよ」

するっと出た嘘に、僕が一番驚いた。
なに言っちゃってんの僕?
「このへんに落としちゃってさ。菜々子ちゃんが一緒に探してくれたんだ」
嘘吐きマシーンは、すぐには止まらない。
「だからさ。菜々子ちゃん、責めないであげてよ。よかれと思ってしてくれたんだから」
言っちゃったものはしかたないなーと少年の反応を待った。

「・・・あまり、遅くまで連れ回さないでください」
「ごーめんごめん。じゃ、菜々子ちゃん、気をつけて帰りなよ」

ひらひらと手を振ると、去りかけた菜々子が近寄ってきた。

「足立さん」
「ん?」
手招きされて、僕はかがみ込んだ。

「ありがとう」
耳元でささやかれて、ちゅっと髪にキスされた。

「足立さんがこまったことがあったら、菜々子のこと呼んでね!」
「あはは、考えとくよ」
「足立さん、大好き!」
「はは。・・・えーと菜々子ちゃん。後ろのお兄ちゃんが嫉妬で僕に殴りかかる前に帰ってくれる?」

「・・・菜々子」
「うん! じゃあ足立さん、さようなら!」

「はいはい。ははは、はぁ・・・」

あ〜疲れた。
ぽりぽりと頭を掻きながら、2人とは別の方角に歩き出す。
人間、慣れないことはやるもんじゃないよ。


「あ〜署にいる堂島さんに、なんて言い訳しようかな」

困った困った、あ〜困ったと変なメロディにのせて、鼻歌を歌った。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************






























































































































「堂島さん飲み過ぎですよ」
「あん? 今飲まなくていつ飲むんだぁ?」
もっと飲め! と酒をつがれて、しぶしぶグラスに口をつけた。
本当は僕だってもっと飲みたいけど、さ。
この後のこと考えて我慢してるんだよ?
なのに、堂島さんは沈没寸前だ。
明日になったら「途中から記憶がなくてな」とか言い出すに違いない。
はぁ、もう勘弁してくれっつーの。
普段は堅物で、酒を飲ませたらくだまいて。
一体いつエロいことすればいいわけ?
せっかく居酒屋の個室とったのにさぁ。
はぁ、と酒臭い息を吐いて、頬杖をついた。

「焼き鳥でも頼みます?」
「ん〜そうだなぁ、漬け物も頼む」
「・・・まだ飲む気っすね」
「刑事はぁ〜、飲んでなんぼだぞ!」
がはは、と大声で笑って、堂島さんは机に突っ伏した。
「ちょっ、寝ないでくださいよ」
「ん・・・あぁ」
「堂島さんの分も頼みますからね!
ほら、ちょっと寄って! ボタン押せないっすから!」
店員を呼ぼうと、人差指を伸ばした。
「・・・えっ?」
押す直前、手首を掴まれる。
追加で何か頼みたいのか? 堂島の方を見た。
相変わらず机に頭を乗せていたが、とろんとした目は僕の指先に集中している。
「あの・・・?」
「あるじゃねぇか」
コントローラーを奪われた僕の人差指は、ボタンを素通りし、
堂島の、酔ってぽってりと赤くなった唇を、ぐっと押す。
串ものでも食べるように、熱くなった口内に吸い込まれる。
ぬめった舌で嘗め回されて、ぞくぞくっと震えがきた。
「・・・っ」
「他のも食べさせろよ」
ちゅぱっと音をさせて、中指、薬指、と味わわれていく。
その積極的な舌使いが、日中のデスクワークからは想像のできない淫乱さで、下手なセックスより興奮する。
かりっと甘く噛まれて、腰のあたりが怪しくなってきた。
自分の指を嘗めさせたまま、唇にキスする。
「・・・んっ、お前、食いにくいだろうが」
抗議してくる酔っぱらいの目を、ちらっと見て、さらに深く口付けた。
指と舌で口内を蹂躙し、息さえ自由にさせてやらない。

「どうします? ラストオーダーまで、まだ時間ありますけど」
ふくみをもたせて言うと、堂島は切なそうに首を振った。
「店、出ましょうか」
「がまん、できない・・・」
「じゃあ、ここでやって、あんたのエロいところ店員さんに見てもらう?」
指先で口内をかき回すと、苦しそうに首を振った。
あぁ、そんな顔されたら勃起しちゃうって。
がりっと唇を噛んで、堂島を立たせた。




**********************************




「おはようございます」
署内の休憩室で頭を抱えている堂島を見つけて、隣に座った。
「コーヒーいります?」
「・・・おう」
「二日酔いですか」
「あぁ・・・。今回は特にひどくてな」
「昨日は飲みましたからねぇ」
「すまん。介抱してくれたんだろ?」
「はは。で、どこまで記憶あります?」
「えっとジョッキ三杯目?」
「へぇ、ほう、そうですか、へぇ〜」
「な、なんだ? 俺、やばいことしてたか?」
「いや、いつも通りですよ」
「そ、そうか」
「いつも通り、エロかったですよ」
「はぁ!?」
「いや、いつも以上かな」
「ちょっ、お前、バカなこと言うな!」
「あんなに腰振って・・・」
「はぁ!? てめっ、嘘言いやがって!」
「信じないんですか? なら今夜も飲みに行きましょうよ。
証拠写真撮ってあげますから」
「おうおう。撮ってもらおうじゃないか。
豪快な飲みっぷりをなぁ!」
「約束ですよ?」
「男に二言はねぇ!」
「店、予約しておきます」
一気にコーヒーを呷る堂島に、僕はほくそ笑んだ。

本人がいいって言ったからねぇ?
さっさと仕事を片付けて、飲みにくりだそう。
そうだ。後で、携帯チェックしておこう。
だって写真と動画は、すぐにメモリーがいっぱいになるから。

「夜は、長いですよ」
「はは、望むところだ」

堂島は明るく笑う。
それを見ながら、僕は紙コップに深く爪をたてた。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





























































































































「う〜、痛ぇ」
唇にふれると、はしっこがぱっくり割れていた。
「花村〜、なにしてんの?」
「ん〜唇われちゃってさぁ。すっげぇ痛いのね。
里中は大丈夫なのか?」
「そんなの修行してたら平気だってば!」
「関係なくね?」
「はは、肉が足りんのだ。肉が」
「・・・潤ってますなあ」
「まぁね! 女子は捨ててないからね!」
「嘘つけー!」

「2人とも、どうしたの」
「あー雪子! 花村が肉食いたいって」
「違ぇって! そりゃ里中の日課だろ!?
天城〜、里中なんとかしてくれよ」
「がんばれ、花村君」
「そーですよねー。
で、俺の話なんだけど、唇がこんななって痛いんだよな。
女子はどうやって治してんの?」
「肉を食う!」
「えっとリップクリームとか」
「やっぱそうか」
「ちょっと! あたしのことスルーしないでよ!」
「えっと、昨日買ったから、花村君、使ってみる?」
「え? いいの?」
「うん」
カバンを探り始めた天城に、ドキドキする。
そ、それって間接キス?
「はい。どうぞ」
「えらい小さいな?」
「1本買ったら、試供品でついてきたんだ。
よかったら使って」
「サンキュー天城」
「返さなくていいからね」
あ。今、俺グサッときましたよ。
「あ。模様かわいい。においとかついてるの?」
「柑橘系って書いてたと思うけど。どう花村君?」
「黄色、だなぁ」
3人でまじまじと中身を見る。
「ま、まぁぬってみるわ」
2人が見つめる中、なにかイケナイことをしているような気持ちになりながら、
ぬるっとするものをぬった。
「ちょっとしみるな〜。
つか本当にもらっていいの?」
「うん。使って使って」
「ありがとな」
「・・・それにしても男子の唇がテカってるのって、
なんか新鮮つーかなれないっつーか」
「花村君、そっちの道に目覚めちゃったりしてね」
「そ、そんなわけねーだろ!?
俺が好きなのは、女の子! まじりっけなしの女の子だかんね!」
「いや、最初はみんなそういうらしいし」
「んな情報どっから仕入れてくるんだよー!」

と、教室中から視線を感じた。

「え? 花村君ホモなの?」
「そっか。お前もとうとう・・・」
「そういえば転校生とやたら仲いいし?」
「おめでとう☆」

「なにいってんだお前らー!!???
違ぇからな! ぜったい違ぇからな!
言いふらすんじゃねーぞ!?!?」

生温い空気がただよう。

ぽんぽんと、肩を叩かれた。
隣の列に座ってるやつだ。
「75日、がんばれ♪」
「噂決定ー!???』

しばらく教室中からからかわれ、ツッコミつつ、バイトの時間になって
あわてて走った。





「くっそ。クラスのやつら、覚えてやがれ」
「ヨースケ、どうしたクマ〜?」
「なんでもない」
音高くロッカーを閉めた。
「なんか元気ないクマね〜」
「携帯の声も、いつもと違ったよな」
「はは、いつか相棒には話す日がくるかもな・・・」
目をパチパチさせる2人に、「そっとしておいてくれ」と力なく頼む。

「そういえば陽介、唇大丈夫か?」
「え、あ、うーん。一応、リップクリームもらったんだけど・・・」
「え? だれから? もしかしてプリチーガールから?」
「だ、だれからでもいいだろ! 
・・・ちょ、ちょっとぬるから、お前ら見んなよ?」
「なに恥ずかしがってるクマ?」
「いいだろ別に!」
「ふーん。あ、クマはおばちゃんたちにあいさつしてくるクマ!」
「おう。迷子になるなよ!
・・・・・・・・・・じゃ、じゃあ俺ぬる、から」
相棒の視線が気恥ずかしくて、頬が熱くなってくる。
え、俺、なに相棒のこと意識しちゃってんの?
俺が好きなのは女の子! おーんーなーのーこ!
男の視線なんてキニナリマセーン!
指が震えるのは、武者震いだ。そう武者震い!
いざ、いざ〜!

ぐいぐいと男らしくぬって、蓋を閉じる。
へへ〜! これで文句ねぇだろ!

「変わった色だな」
「あ、やっぱりそう思う? なんか柑橘系らしいんだけどさ」
「俺も使ってみていいか?」
「え!?」
「だめか?」
「え、あ、あぁ、いいぞ。全然いいぞ!
俺たちは親友だからな!
むしろいっぱい使いたまえ!」
「・・・・・・・・・そうか」

リップを差し出すと、相棒が首をふった。
「それは今度でいい」
「え? じゃあ・・・」
不意にリップを持った手首をつかまれ、引っ張られる。
「わわ、ちょっ・・・!」
ぬったばかりの唇に、相棒の顔が近づく。
「何のにおいかな?」
「ちょっ、えっ、嗅ぐなって! つーか近すぎ近すぎ!
も、はなれ・・・」

急に目の前がかげった。
やわらかくて、気持ちいいものが唇におしつけられる。
やさしく何度か食まれて、それは離れていった。

「レモン味、だな」
「・・・・・・・・・」
「陽介?」

相棒の顔がまた近づく。
我に返った。

「どどどどどどどどどどどどういうことだー!!????」
「え?」
「え、じゃないだろ!?
さっきの、ほら、あれじゃん!?」
「・・・あ、あぁ」
「お、お前、なんでそんなに落ち着いてんの!?」
「いや、何のにおいだろうなと思って見てたら・・・つい?」
「そんなレベルかよ!? おおおおおおおお俺の純情がー!!?」
「たまにあるよ、そういうこと」
「ねーよ! つかお前、そんなにあるのかよ!?」
「陽介。外に聞こえる」
「ぐぐぅ。なんか腑に落ちねぇ」

「ヨースケ〜、まだぁ?」
勝手口から、ひょっこりクマが顔を出す。
「あ、あぁ。今、行く」
「あれれ〜? この部屋、いいにおいがする〜」

そのとき、クマがつまずいた。

「あ」
「あ」

俺は、また大切なものを失ってしまった。

「げげ〜! ヨースケとチューしちゃったぁ!
クマ、もうだめかも・・・」
「だぁ〜! お前のせいだろがぁ!」
「2人とも、声、うるさい」
「も、元はといえば相棒が・・・! って、も、もういい!
この暗黒部屋から出る! 帰る!」
「ヨースケ待ってぇ!」

ダッシュでジュネスを飛び出し、気がついたら商店街まで来ていた。
「くそ、なんだったんだ今日は・・・」
ごしごしと唇をふいて、ぴりっと傷みが走る。
「ってぇ。唇われてたの、忘れてた」

あぁもう、と髪の毛をがしがしかいた。

「明日、どんな顔して相棒に会えばいいんだよ・・・」
その前に、クマに会わないといけないんだけど。
「くそっ。なんで俺ばっかり!」
苦々しくポケットに手をつっこんだ。

指先に、今日の元凶がこつんとあたる。

「・・・・・・・・・でも、気持ちよかったなぁ」
ぽろりと出た独り言に、はっとする。

「いやいや落ち着け花村陽介。
お、俺は女の子が好きなはずだ。
あのやわらかくていいにおいのする・・・」

さっきのアレもやわらかくて、いいにおいがして・・・。

いやいや、えーと、え〜!?

ぎゃあああああああと心の中で叫びまくり、しゃがみ込む。

落ち着いては歩き、真っ赤になってしゃがみこむというのを何度もくり返し、
最後の曲がり角まで来た。

「と、とりあえず、もうちょい考えてみるか」

ふらつく頭を支えながら、溜息を吐いた。



75日は、まだまだ長いからさ。






→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************





































































































































小さなミスが一日中、尾を引いている。
いつもならさっさと忘れるレベルなのに、今日だけわけもなくいらついている。

同僚は外出。
夜ももう遅い。
こんな日は、家で憂さ晴らしするのが一番だ。
飲むか食うか寝るか。
コンビニでもあればビールとつまみを買うのだが。
くそっ。田舎め。買える店はしまってやがる。

小石を蹴ろうとして、空を切った。

あぁくそ。

衝動が理性を蹴りつけて、頭も体も爆発しそう。
暑い。ネクタイをゆるめるくらいじゃ、おさまらない。
はやく熱を発散したい。


「足立さん・・・?」


ぎこちなく振り返った。
自動販売機に照らされるまでもなく、だれかわかる。

「あぁ、君」
「残業ですか?」
「帰るとこ。君もはやく帰んなよ」

いらいらしてるんだよ、僕はさ。

「そういえば・・・」
「何?」
「あれです、あれ」
「は?」
「えーと、あれ、名前が出てこないな」
「・・・」
「ほら、2人で食べた・・・」
はやくして・・・。
「足立さんもおいしいっていってた・・・」

もうむり。

蛍光灯に、てらりと光った唇に食らいついた。

食らいながら暗がりに引きずり込む。
音がするほど吸ってのみこんで、
相手の腕がまわってきたところで、
突き放した。



くそ。
足りない。
もっと食いたい。

口をぬぐおうとして、腕を引き寄せられる。

壁におしつけられて、
むりやり用意された皿を貪った。





→ページの先頭に戻る。

→メインページへ。


******************************************













お題お借りしました。「TOY」