不透明な猫、霧雨
「足立、帰るぞ」
「ふぁあああい・・・」
「寝るな。先に行っとくから来いよ」
勘定を済ませ、堂島は先に居酒屋を出た。
雨が降っていた。
「傘、ねぇなぁ」
霧雨だから、まだましか。
たしか足立も手ぶらで来ていたはずだ。
「しかたねぇ。濡れて帰るか・・・」
背後で扉が開く。
なぁ足立、と俺は振り返った。
軽い音が響いた。
「どうぞ〜」
傘をさしかけられた。
「馬鹿!」
「いった! 殴らなくてもいいじゃないですかぁ〜」
「てめぇ、誰の傘とってんだ! はやく戻せ!」
「えぇ? お前のものは僕のもの。僕のものは僕のものですよ〜」
「阿呆か! 窃盗罪で逮捕するぞ! さっさとそれ寄越しやがれ!」
「ふぁああい」
だらしない顔の足立をヘッドロックしながら、
夜道をひきずっていった。
「もう、堂島さんたら強引〜」
「気持ち悪い声、出してんじゃねぇよ」
「色っぽいですか?」
「馬鹿」
細い顎をぐりぐりしてやる。
堂島さぁん、堂島さぁんと甘ったるい声が耳をくすぐる。
三日月みたいな唇が怪しく光ったような気がして、一瞬、足立の顔を凝視した。
本当に、これは俺の知っている足立か?
さっきのことが、頭をよぎった。
闇の中に、白い手が浮かぶ。
細い指が女物の傘を引き寄せ、俺にさしかける。
生ゴミを捨てるように無造作に。
けれど、どこか優雅な仕草。
犯罪の常習者みたいだった。
「まさかな・・・」
「ふぁあああい???」
「いいから寝てろ」
足立の頭をぽんぽんと叩く。
機嫌のいい猫のように体をくねらし、足立は俺を上目遣いで見てきた。
「堂島さん」
「ん?」
「堂島さん・・・、僕、・・・」
「何だ、言ってみろよ」
「僕、本当は・・・・・・・・・」
繁華街は遠のいて、足立の顔に影がかかる。
堂島の湿ったシャツに、黒い指が食い込む。
街灯をはじいて、爪だけが鈍い光を放っている。
タクシーが通り過ぎて行った。
「・・・何でもないです」
予感めいたものが、頭をかすめる。
「・・・足立、お前・・・」
「えい」
「うっわ!?」
「へへ〜、キスしちゃった」
さっきまでの暗さが嘘のように、悪戯っぽく足立が笑う。
「・・・不良猫め」
「酔ってるもん♪」
一発、頭にくれてやる。
「痛い〜痛いよ〜」
「自業自得だ」
「僕、堂島さんの猫だもん」
「・・・じゃあ、大人しくしてろ」
「?」
「お前は俺の猫なんだろ?
飼い猫は、ご主人様のいうことを聞くもんだろうが」
「・・・ぷっ」
「・・・何だよ」
「堂島さん、せりふ、くさい」
「う、うるせぇ」
「くさい〜くさいよ〜」
「じゃあ、しがみつくな」
「やですよ。堂島さんの猫だもん〜」
「猫は人語をしゃべるな」
「了解にゃ♪」
「・・・ちょっ、変なとこ触るな!」
「けちにゃ」
「愛玩されたきゃ、黙って寝てろ」
「にゃあ」
はり付いたシャツ一枚分だけ隔てて、
猫は密着してきた。
ぽろり、と一粒涙を流したようだったが、
俺は気づかないふりをして、
頭を撫でた。
雨はまだ降り続いていた。
傘と足立でした。
堂島さんが刑事の勘を働かせかけたり、
足立が告白しかけたりした瞬間もあったかな〜と。
ま、まだゲームクリアしてないので
よくわかりませんが(笑)
最近、足立がかわいくてたまらない。