堂島家のベルを鳴らして、溜息1つ。
3人で出迎えられて、引き気味なところを子ども2人に腕を引っ張られて、内心溜息多数。

どうしてこうなったんだ、と手みやげをこたつ机に置き、渡されたそれに、溜息を呑み込んだ。


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年末年始の予定を堂島に聞かれたとき、予感はあった。

「お前、帰省しないのか?」
「はぁ、まぁ。たまには大掃除でもしよっかなーなんて」
「じゃあ、うち来るか?」

やっぱりな。
「いえいえ。いっつも堂島さんにはお世話になりっぱなしですし。
たまには家族団らん! ゆっくりしてくださいよ」
微笑みで防御。
訳:「僕を誘わないでください」
それがわかってかどうなのか、堂島はめげずに交渉を続けた。
いい加減、うんざりしてきた頃、あの甥っ子と菜々子が署に現れ、3人で僕をパーティーアタック。
おまけに僕の態度に泣きべそをかきだした少女の気配を察し、署の職員全員が猛攻撃をしてきた。


「菜々子ちゃん、泣かせたんは、お前か? あん?」
「署で年越しするかぁ? キャベツ王子よぉ」
「なんのためにお前みたいな若者を年末年始、休みにさせてやったと思うんだ。ちったぁ考えろ?」
「足立=サン。インガオホー」


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結局、署で年越しするより100万倍まし、ということで、堂島家にやってきた。
手ぶらでいいぞ、と堂島は言っていたが、そうもいかない・・・というか、後が面倒くさいからということで、酒とジュースをジュネスで買ってきた。
こたつ机に置いて、コートを畳み、ぺたりと座る。
そのとき、菜々子といっしょに総菜のパックを開けていた堂島が軽く舌打ちした。
「しまった。肝心なものを忘れてた」
「え? ・・・あー!!!」
「すまん、菜々子。父さんがとってくる」
「菜々子も行くー!」
「そうか? ちょっと出かけてくるから、2人は留守番しててくれ」

ぽつんと取り残される僕ら。

「これも君の作戦かい?」
「はい?」
「大晦日まで僕を見張る気?」

隣に座った少年を睨みつけた。
僕が稲羽市で正月を迎えるのは、初めてではない。
僕と少年は記憶を保持したまま、何度も何度も「この年」をくり返している。
『今回』は少年が徹底的に妨害してきたせいで、年内は1人もテレビの中に入れられなかった。
連戦連敗。屈辱以外のなにものでもない。
そして今日、むりやりこの家に来させられて。
どこまで僕を馬鹿にすれば気が済むのか。

「・・・もう、やめませんか」
「は?」
「マヨナカテレビに関わること」
「・・・いまさら?」
「今だから、です」
「・・・」
「今回は足立さんは『何もしていない』。だから・・・」

「ストーップ」

「・・・」
「そういうの聞く気分じゃないんだよね。あんまりしつこいと帰るよ?」

僕はむりやり視線を剥がした。
こたつから足を出して、庭の方に向き直る。

雪が降っていた。
音もなく、自由に。

天気すら刻々と変わっていくのに、僕らの関係は同じ檻の中、変わらず横たわっている。
何度も何度も、そしてこれからも・・・?
果てはどこにあるのか。ある日、前ぶりもなく僕ごと消滅するのか。
わからないなことへの不安、絶望。日々、押し潰されそうで、マヨナカテレビという刺激に依存してしまう・・・。
それは、この少年に依存していることにもなるのだろうか?



「年末年始は、なにもしないよ」
ぽつり、と出たのはそんな言葉で。

「僕だって、疲れてるんだから」

隣に、そっと座る気配。

「今年も、もう終わりますね」
「うん」
「足立さん・・・」

気配を感じて横を向くと、少年が近づいてくる。
恋人みたいな距離。
交わるまで、あと少し・・・。



「ただいまー!」


大きな声に、あわてて離れた。


「おおおおお帰り〜! 寒くなかった?」
「うん! お父さんと手、つないでたから」
「そ、そう」

こたつを囲んで、4人は定位置に座る。

「さて。蕎麦の前に。・・・菜々子」
「は〜い」

少女は、持って帰ってきたばかりの袋を腕いっぱいに抱え、座っている一人一人に配り歩いた。

「足立さんも、どうぞ!」
「え、なにかな」

大きな袋から、中身を引っ張った。
袢纏(はんてん)だった。

4人とも同じ柄だが、結び紐の先に、僕のは黄緑色のポンポンがついている。
「そのキャベツはね! 菜々子が作ったんだよ!」
「巽のやつに教えてもらったんだろ?」
「うん! ぬいつけてくれたのは、完二お兄ちゃん! 菜々子、がんばったよ!」
「あ、ありがと」
「うん!」

完全に毒気を抜かれて、僕はそろそろと袖を通した。
ほどよい重みと、包まれるような安心感に、胸の奥がひりひりする。

・・・なんだ、これ。

顔をあげると、にこにこと3人が微笑んでいる。
同じ袢纏を着て。あったかいこたつで、蕎麦なんて用意して。

・・・なんだよ。ほんと、恥ずかしいやつら。
こんなベタな家族ごっこに、僕が、何か感じるわけ・・・。

「・・・足立さん、泣いてるの?」
「寒いと人恋しくなるんだ。それに今年は、足立もがんばったからな」
もっと何かがこぼれそうになり、顔をそらした。
「な、泣いてなんかいませんよ! ば、ばかじゃないですか!?
久しぶりの雪だから感動したんですよ!」
「へぇ。風流なんだなぁお前。なんなら今度、露天風呂でも行くか?」
「え・・・」
「俺も行きたいです」
「菜々子もー!」
「じゃあ、正月は露天風呂に突入するか!」

『オー!』

「ちょっ! 僕は行くなんて・・・!」
「じゃあ多数決! 足立にも来てほしい人!」

『はーい!』

「4対0。決まりだな」

むりやり僕の手をあげさせといて、それはないでしょ堂島さん!?
頭を撫でられたって、ごまかされないんだからな!?

「さ。みんな箸を持て」
「ちょっ! 堂島さん、まだ話は・・・!」
「署で電話番するか?」
「行かせていただきます」

「よし。きちんとした年末のあいさつは後にとっておくとして、だ」

堂島は、1つ咳払いした。

「・・・この4人で大晦日を迎えられて、うれしく思ってる。
俺と足立は刑事だ。今夜も事件が起これば飛び出していかなければならない。
明日も、どうなるかわからない。
だが、それはお前達、子どもでもいっしょだ。
だから、それぞれやるべきことを目一杯やっていってほしい。
後悔しないように・・・」
「堂島さ〜ん。早く食べましょうよ。麺、のびちゃいますよ〜?」
「あ、あぁ、そうだな。じゃあ・・・」

『いただきます』

「・・・」
「足立、食べないのか?」
「・・・猫舌なんで」
ふぅふぅと息を吹きかけながら、ちら、と3人の顔を見やる。

・・・不器用な人たち。
いつもならわずらわしい人間関係も、今夜は、どこか救われたような気がして。

湯気に隠れて、こっそり微笑んだ。











大晦日ネタでしたー!
署内に1人、忍者=サンがいるようですが、キニシナイ。

袢纏は、それぞれの色が違ってもいいですね。
菜々子ちゃんはピンクでもいいよ!
みんなピンクでもw

結び紐の先についてるのが、それぞれの好きなものでもいいなぁ。

それでは、みなさま、よいお年を!