Aquarium Note-O
フードメニューを食べた後、プールサイドに残ったのは堂島と甥だけだった。
時々飛んでくる水しぶきを浴びながら、遊んでいる子供達に手を振る。
堂島は缶ビールを半分ほど飲んだところで、くらっとした。
睡眠不足にアルコールは、まずかったようだ。
「ちょっと木陰いってくる」
涼風にあたりたい。
「大丈夫ですか」
「あぁ。せっかくなんだから、お前も遊んでこいよ」
「俺は、遼太郎さんと一緒にいたいです」
微笑む甥に、頬が熱くなる。
二人は、躰を重ねる関係だ。
周囲には公言していないから、周りに人がいるときは二人とも行動を控えるが、
二人きりになると甥は積極的になり、堂島のことを「遼太郎さん」と呼んだ。
木陰に移動すると甥の気配が濃厚になり、堂島はなおさら落ち着かない気持ちになる。
それでなくてもプールサイドでかき氷を食べたとき、甥が堂島に触れ、怪しい感覚になっていたのだ。
紛らわすように、理性的な言葉を選ぶ。
「なぁ、お前、俺でいいのか?」
「何がです?」
「こんなおっさんの相手しなくても、可愛い子がいるだろう。 あいつらも、お前のこと嫌いじゃないみたいだし」
「遼太郎さん」
遮るように甥が微笑む。怒らせた、と思った瞬間には、唇が重なって強引に舌が絡み付いてきた。
そのまま強引に近くのシャワー室に押込められる。
鍵の音。
一つの個室に男二人。狭い。
タイル張りの壁に背中が当たる。逃げられない。
キスのリズムに合わせるように、ゆるく屹立したものを扱かれる。
先走りと唾液が、くちゅくちゅと音をたてる。
自分達以外、誰もいないシャワー室に、水音が大きく響いて恥ずかしい。
誰かが途中で入って来たら……駄目だ、と思うほど興奮する。
だらだらと蜜が垂れ、どこに触れられても気持ちよくてたまらない。
「こういうのしたくなるのは、あなただけです」
ようやく解放された唇で大きく喘ぐと、少年がぺろりと唇を舐めた。最高にえろくて、ぞくぞくする。
「でも、あっ」
「俺が嫌なんですか?」
きりっと乳首を摘まれる。びくん、と跳ねる躰。
「お前には、もっと選択肢がっ」
「今の俺には、あなただけです。これからもね」
「でも……」
「俺はあなたから離れません。だから安心して、俺を受け入れてください」
「……っ」
「それが怖かったんでしょう?」
優しく長い指が、頬に触れる。
そうだ、と堂島は心の中で呟いた。
愛しい人の喪失が、怖くてたまらない。
もしこれ以上こいつを好きになって、離れられたら……。
自分は耐えられない。追いかけることもできない。
そんな体力もなければ、好きな相手の未来を潰すことも、自分にはできない。
だから、いつ別れてもいいように心の準備をしてきた。
けれど、最近はそれも難しくなってきて……。
「遼太郎さんは、俺のこと好きでしょ」
「……っ」
「言ってください」
「……好き、だ」
少年がとろけるような笑みを浮かべる。
「その気持ちを信じてください。俺はその千倍好きです。だから、絶対にあなたを離さない。
あなたが離れたくても離れてあげません」
「そりゃ、怖いな」
だが、臆病な自分にはそのくらいが丁度いいのかもしれない。
「いいのか俺で」
「こちらの台詞です」
「俺から……離れないでくれ」
「もちろん」
心臓が跳ねる。甘くて優しいキスに、頑固な心が解れていく。
今なら素直になれる。相手にも自分にも。
もっとこいつを喜ばせたい。もっとこいつと繋がりたい。
少年の水着に指を入れ、すでに硬いそれを、ゆっくり揉み込んでいく。
「遼太郎さん……」
少年が驚いた表情で、熱い吐息を洩らす。
そういえば俺から触るのは初めてかもしれない。
もっと触りたくなって、自分のと一緒に握り込んだ。
どくどくと脈打つ二つの獣が、相愛の歓喜に震え跳ねる。
思いのたけを吐き出しても、まだ硬いままで、そのまま誘うように腰を擦りつける。
片足を抱えられ、窄みに猛り濡れたものが、押し当てられる。
「ふっ、あっ」
ゆっくりと確実に入ってくる。中頃で、誰かがシャワー室に入ってくる気配がした。
口を自分の手で塞いだのと、少年がシャワーの栓を最大開き、一気に貫いたのは、同時だった。
その衝撃だけで、射精。途中なのに容赦なく突かれて、タイルに、甥の躰に、精液が飛び散る。狂ったように、また屹ちあがる。
どんどん増えていくシャワーの利用者。
羞恥と快楽と複数の目に犯されているような妄想に、躰中舐めつくされる。
もっともっと喰われたい。もっともっと喰いたい。
「滅茶苦茶に、してくれっ」
涸れた声で囁く。内側で何度目かの飛沫が叩き付けられ、その波に自ら溺れていった。
「腰、痛ぇ」
「抱っこしましょうか?」
「いい。お前、先に出ろ」
個室に一人になった堂島は、溜息を吐いた。
それすらも行為の余韻で熱く感じられて、羞恥で叫びそうになる。
残滓を流している最中も、まだ臨戦できそうな自分が恐ろしかった。
「いかんいかん。早く出ないと」
冷水を全身にかぶる。
理性だけは通常運転し始めたので、ロッカーに行き、私服に着替えた。
プールサイドに行くと子供達はまだ遊んでいて、その明るさと身の奥の昏さに眩暈がしそうになる。
逃げ込むように喫煙スペースに行くと、なぜか喫煙中の足立がいた。
「何してんだお前」
「え? 堂島さんこそ何で?」
「そりゃお前……プールしかないだろ」
煙草を取り出す。ポケットを探ったが、ライターを忘れてきた。
「火、貸してくれ」
「はいはい、どうぞ」
足立が着火したライターを差し出す。
咥えた煙草を近づけると、あと数センチのところで、そらされる。
二回繰り返して睨みつけると、素直に火がつけられる。
「お前、さぼりだろ」
「えぇ〜? 休憩ですよ休憩」
「それ吸い終わったら行けよ」
「あれ? 今日はなんか優しいっすね」
「今すぐ行くか?」
「おいしく頂きます」
にこっと笑う部下。
どうも調子が出ない。
躰がだるくてベンチに座ったが、それすら辛い。
吸い終えた足立が、堂島の前に立った。
顔を上げると、肩に手を置かれた。
近くまで顔を寄せられ、ドキッとする。
「……何だ?」
「何か……っすよね」
「え?」
「今日の堂島さん、なんかエロいっすよね」
「は、何いって」
足立が、堂島の首筋を嗅いだ。
「シャワー浴びたんですね」
「着替えたからな」
「まだ子供が遊んでるのに?」
足立の手が肩のラインを撫で、腰までおりてくる。
びくっと跳ねる躰。戻ってくる熱。
足立が、にぃっと笑う。
獲物をいたぶる獣の目。
ゆっくりと唇が近づいてくる。
「その辺にしてもらえますか」
少年が立っていた。
足立の肩を掴んでいる。
意味ありげに口角を上げた足立は、「また明日」と、そのまま出ていった。
堂島は、ふぅっと息を吐いた。
妙な汗が背中に流れる。
「気をつけてくださいよ。遼太郎さん、隙だらけなんだから」
「そんなこと」
「あるんです。今だって危なかったでしょ」
「何で、足立は……」
わからず堂島は首を振った。
少年が溜息を吐く。
「今の遼太郎さんは、まぁいつも色気たっぷりなんですけど、通常の二倍以上フェロモン出てますからね。女性好きでも、あなたの色香に惹かれます」
「俺は、そんな……」
「自覚がないのが一番恐ろしいですね」
少年の唇が耳元に近づく。
息を吹き込まれて、屹ちそうになる。
微かに笑う気配がして、「ほら淫乱でしょ」と言われた気がした。
「遼太郎さんは俺のものです。だから躰も、俺にしか反応しないようにしないとね」
帰宅後、甥の部屋でバタフライよりも激しい動きをシーツの上で強いられた堂島は、次の日、年休を取るはめになったのだった。
久しぶりの主堂でした。
堂島さんの年上だからこその悩みが書けてよかったです。
もちろんプールならではのエロもね!<え
この話では、足立さんが堂島さんを狙っているようですが、どうなることやら。
いろいろ妄想しつつ、お楽しみくださいませv