Aquarium Note-A
市民プールの周りをパトロールしてこいと言われたときから、嫌な予感はしていた。
建物の外からでも子供達のはしゃぐ声と、破壊的な水音が聞こえてくる。
騒音レベルだ、と思って足立は顔をしかめる。
それでなくても今日は体調が悪いし、暑いし、適当にさぼって帰るのが一番だ。
日陰を求めて歩くと、柵ごしにプールが見えた。
「げ」という声が出て、一番会いたくなかった相手と視線が合う。
「足立さん!」
少年の声に、近くにいた10人ほどが振り返る。
「こんにちは足立さん!」
代表して菜々子が一番大きな声であいさつする。
足立は、ようやく人間らしい笑みを浮かべた。
「ははは。プール気持ちよさそうだね」
「足立さん、ビーチボールしない?」
菜々子が可愛らしく言う。
「いやぁ、僕、仕事中だから」
「今は昼休みだろ?」
「げぇっ! 堂島さん、何してるんすか!」
「お父さん、菜々子、足立さんと遊びたい」
絶望って、こういうときに使うんだと思う。
堂島が菜々子に向かって頷くと、ニヤリと笑った。
「足立、うちの最高司令官がこう言ってる。 水着代は俺が出してやるから、来い」
「職権乱用なんですけど!?」
「パトロールしながら遊べばいいですよ、足立さん」
「滅茶苦茶だよね、それ!?」
「早く」「早く」「早く」
こんな圧力あっていいのか。
渋々、足立は入園料を(後から堂島が払ってくれたが)出し、強引な人たちと合流した。
「……売店ってどこですか」
「あ、俺、一緒に行きますよ」
堂島の甥に案内され、足立は水着を買った。
更衣室に行きロッカーを開け、手に持っていた上着を入れた。
シャツに手をかけたところで、隣の少年に向き直る。
「君、上着もってる?」
「パーカーなら」
「貸して」
足立はそっけなく言った。
「肌弱いから。痛いの嫌だし」
「それだけですか?」
少年が意味ありげな笑みを浮かべる。
足立は、かっと顔を赤くして、小さく叫んだ。
「き、君が昨日、あんなにするからだろっ! いいから出てけ!」
パーカーをむしり取り、少年を追い出す。
誰もいないのを確認して、足立は裸になった。
パーカーのファスナーを上げながら、自分の躰に散った、赤い行為の跡を隠す。
太腿の印はギリギリ水着に隠れて、ほっとしたが、そんな自分に舌打ちした。
「クソガキめっ」
子供用のプールでビーチボールをした。
パーカーは着たまま、水着だけ濡れる。
しばらくして子供達の興味が他にうつったので、プールサイドに座った。
足だけ水につける。
意外とそれが気持ちよくて、両足を水に遊ばせる。
少し体調も上がってきて、こういうのもたまには悪くないかと思う。
「デートみたいですね」
隣に、少年が座る気配。
「他の子と遊んでくれば」
「一つどうぞ」
「かみ合ってないんだけど」
ちらりと見ると、ソフトクリームが差し出される。
その誘惑に抗えず、足立は受け取って舐めた。
悔しいけど美味しい。それが、少年が持っているのと同じものでも。
「ちょっと歩きませんか」
「……ちょっとならね」
ゆっくり立ち上がり、少年についていく。
「ここで短期バイトしてるんです」
少年が、シャワー室のある建物の「関係者用入り口」の鍵を開ける。
屋上に上がると、足立は息をのんだ。
青。
記憶にしまわれているどれよりも遥かに大きく、眩しい青。
白い手すりが水平線のように伸び、空が広がっている。
近づくと、プールの水が足下からせり上がり、新しい世界を創る。
「俺、この景色が好きなんです」
後ろから少年の声が聞こえる。足立は頷いた。
「今日は賛成、かな」
足立は手すりに両腕を置き、ソフトクリームを舐めた。
前にはプール、右下には木々が生い茂り、そこに人はいない。
後方には上がってきた非常階段があり、前方の喧噪に音を吸われてしまったように静かだ。
よほど注意しないかぎり、階下からこちらを見る人はいないだろう。
「足立さん」涼しげな声。
後ろから抱きつかれる。プールと少年の匂いに、くらっとした。
「ちょっと君…」
長い指が、パーカーの下にもぐってきた。
腰から肩甲骨を撫で上げ、前に滑らせてくる。
「……っ」
摘まれ、捏ねられ、先端がふっくらする。
「ちょっ、こんなとこでやだって」
不埒な手から逃れようと躰をひねると、パサッと足下で音がした。
水着が……。
慌ててパーカーを引っ張って、下肢を隠す。
「ちょっといい加減にしなよ!」
こんなところ見つかったら、注意じゃ済まされない。
「大丈夫。足立さんが声出さなければ、ばれませんから」
「そういう問題じゃ……あっ!」
つぷっ、と後ろに指を入れられる。
プールで解れたのか、昨夜の名残か、柔らかくそこは開く。
「や、抜いてっ」
「もうちょっと濡らしますから」
「違ぁっ、あぁっ……!」
新しい刺激に躰がびくんと跳ねる。
蕾に、とろりと冷たいものが触れたのだ。
「やっ、なに、これっ」
太腿から地面に垂れ落ちたのは、白いソフトクリーム。
理解した瞬間、収縮するそこに、また冷たい液体が……。
ぞくっと背筋を這った快感を逃がそうと、手すりを強く掴む。
落としそうになったアイスは少年が受け止めたらしく、指ですくい、内部に入れてくる。
「やっ、あぁっ、抜いて、抜いてぇ!」
「足立さん、しぃー」
少年が濡れていない手で足立の口を塞ぐ。
「刑事さんは、パトロールのお仕事しないとダメでしょ?」
耳元で囁かれ、「ふぁっ」と声が出た。
内部を擦られ、冷たいのに、熱くて、とろとろで、昨日みたいに何度も注がれたみたいな感覚がして、背筋がぞわっとする。イきたい。早く。誰かに見つかる前に。
「もぅ、はやくして…」
腰を引き寄せられる。
少年のペニスが埋まっていく。
ものすごい充足感と快感に、少年の手に噛み付いた。
「すごっ、締まる」
耳元で熱っぽい囁き。
ぞくぞくして、足立は自分のペニスに手を這わせた。
ぬるぬるしてて気持ち悪いのに、すごく気持ちいい。
こんな明るい場所で、下半身丸出しで、誰に見つかるかわからない場所でセックスして、自分のも扱いて、あぁもう訳がわからないくらい、いい。
「あ、もっ、僕…」
出る、と思った瞬間、根元をぐっと握られた。
「やっ、何で」
苦しくて涙が出る。
「ここで出したら、プールにいる人に、かかっちゃいますよ」
吐息の合間に少年が言う。
その意味がわかって、足立は真っ赤になった。
「根元、自分で持ってください」
足立は言われた通りにする。
ずる、と抜かれる感覚に、震えがきた。
「俺の首につかまって」
情けない格好のまま、少年の首に手を回す。
躰を持ち上げられ、一気に挿入される。
「あぁっ……!」
衝撃に握っていた手が離れ、射精した。
ぎゅっとしがみつくと、少年の肌がいつもより冷たくて、びくっとする。
「移動、します」
「……えっ、待っ、あぁ……!」
少年は挿入したまま、奥へ歩き出した。
足立は、まだがくがくと震える足を腰に絡ませた。
自分で歩きたかったが、中で不規則に動いてくるバイブみたいな肉棒が、気持ちよすぎて、振り落とされたら怖くて、しがみつくしかできない。
脱げかけて足首で引っ掛かっている水着は、少年が回収する。そのわずかな行為でさえ、足立の中を喜ばす。
だが、それは序章に過ぎなかった。
むちゃくちゃなことに、少年は非常階段をおり始めた。
一段おりるごとに、脳まで貫くような快感が全身に走る。足立の奥をぐちゅっと突き、次の階段を目指して足を出すと、違う角度でぐりっとかき回し、着地とともに最奥にどすんと衝撃と射精直前の快感を叩き込む。
「もう、やぁっ、たすけて……!」
全身から快楽の蜜が垂れ、感じすぎて辛い。
「俺のお願い、聞いてくれます?」
「聞く、からぁ……!」
踊り場で、少年が止まる。
「それ、忘れないでくださいね」
手すりに背中がつく。
最後、とばかりに激しく揺さぶられる。
「あっ、あぁ……っ!」
ぴん、と足が伸び、そのまま意識を失った。
「信じられない……」
「すみません」
「ほんと、君、最悪」
「二度と……しないかも?」
「そこは言いきれよバーカ!」
目の前に立つ少年に、足立はバスタオルを投げつけ、腰の痛みに涙目になった。
気がつけば情欲の名残はすっかりきれいにされており、スーツ姿でベンチに寝かされていた。
全身は死ぬほどだるいし、思い出すだけで憤死しそうだし、今からまた仕事に戻らないといけないし、散々だ。
「だから君と関わりたくないんだよ」
あぁ煙草が吸いたい。ポケットを探る。
喫煙スペースに行きたかったが、元気に歩いていけそうもない。
諦めて、俯く。
「送っていきますよ」
「車もってないじゃん」
「お姫様抱っこを」
「却下」
「おんぶは」
「嫌に決まってるだろ」
「肩貸します」
「やだ。自分で歩く」
できるだけ腰に負担をかけないように、立ちあがる。
「一緒に帰っていいですか」
「……お願いのつもり?」
皮肉げに笑うと少年は黙った。
「ささやかな望みだね。ま、好きにすれば?」
後ろから少年がついてくる。
途中、何度か立ちくらみに襲われたが、足立は何も言わなかった。
背広のポケットに手を突っ込み、ぎゅっと握る。
今度は溺れかけても、少年にすがらないように……。
擬音語多めの主足ルートでしたv
嫌々言いながら快楽に弱い足立さんが可愛いと思います。(キリッ!)
あとは、パーカーを下げる足立さんに、キュンときた!
彼氏の服だよやったね!
今回の二人は、割と相思相愛なんですが、ベクトルの方向が違うのと、足立さんのツンぶりに、
全ての要素がハッピーエンドに、とは難しいカップルです。
そこも萌える!<重症
残された主人公のミッションは、熱だした足立さんを看病することだ! めげずにファイトv