階段をおりる途中、何か聞こえた気がした。
「1階、だれかいるんすか?」
「いいや。外から聞こえたんじゃないか?」
「そうっすか? じゃあ先輩、また明日くるんで」
「悪いな完二。裁縫、つきあわせて」
「いいってことっす」
軽く会釈して、俺は堂島家を出た。
沈みかけた夕陽が、目を射る。
一瞬の空白の中、
川のせせらぎが聞こえたような気がした。





「先輩、だいぶうまくなりましたね」
「完二の教え方がうまいからな。勉強になるよ」
「いや、俺なんてまだまだっす。で、ここの縫い取りなんすけど・・・」
今日も先輩の部屋で、裁縫の続きだ。
先輩は無地の部分にカモノハシ、俺は携帯カバーに刺繍。
「完二、ドクロマーク好きなんだな」
「強そうでかっこいいっす。そういえば菜々子ちゃんは?」
「風邪気味だから部屋にいるよ」
「大変っすね。俺、後で見舞い行っていいすか?」
「ありがとう。でも、もう寝てるから」
「そうっすか・・・早く治るといいっすね」
「あぁ。菜々子に伝えとくよ」
「・・・すんません。トイレ借りていいっすか?」
「うん。1階にあるから」
「うっす」

針を落とさないように机に置き、階段をおりた。
トイレまで行き、突然、俺は立ち止まった。

妙な音がした。
昨日の音に、似てる。

だれかトイレに入ってんのか?
ノックをしてみたが返答はない。
ゆっくり扉を開いても誰もいない。
気のせいか?

・・・今度は、はっきりうめき声が聞こえた。
「堂島のおっさん?」
あの低い声は、菜々子ではないだろう。
おっさん、飲んだくれて吐きそうなんじゃ?

気分が悪いなら先にトイレ、使ってもらうか。
とぎれとぎれに聞こえる声と物音の方向に歩き、

「堂島さん、大丈夫っすか」

扉を開けた。
そして立ち尽くした。

一瞬、何が何だかわからなかった。

堂島は布団の上に座っていた。


裸だった。
手足は縛られ、目隠しされ、口にはSMのときのボールみたいなもんを咥えている。
変な物音の発信源は、乳首にはり付いて振動している、やらしい色したローター。
足を閉じても隠しきれないそこは、手足と同じ赤い紐で縛られ、ねっとりと光っている。
快感をこらえ、息をこらしても抑えきれない喘ぎ、
理性と快楽の狭間で、上下する肩、汗ばむ皮膚。真っ赤になった耳には耳栓。
ぴくっ、ぴくっ、と震える体、シーツの上でもがくように動く足先。
男の体なのに妙に色気がある。

ぞくっとして、俺は頭がこんがらがった。


「見つけちゃったか」


びくっと、情けないくらい俺は震えた。
「・・・先輩?」
振り返ると、声の主が微笑む。
「トイレ、行った?」
「い、いや、まだっす・・・って、先輩、これは・・・!」
「あぁこれ? ゲーム、かな」
「ゲームって・・・」
「コミュニティって言った方が近いかも」
いつもの人のいい笑顔で、先輩はさらりと言う。

「完二が帰るまでおとなしく待ってるって約束だったんだ」

約束? これが?

「完二のせいだよ」
「え?」
先輩は溜息をついた。
「完二が気づかなかったら、堂島さん、こんな姿見られなくてすんだのに」

え? は?
それは、なんか違うくないっすか?
理屈めいたことを言いたかったが、干上がった川のように、
口から言葉が流れてこない。

「見つかっちゃったから、おじさんには、おしおきしないと」

先輩は堂島に近づき、閉じられた太腿を開かせる。
堂島の匂いが広がり、快楽の火が完二にも燃え移ったような気がした。
蜜を流すそこと、尻につきささったバイブ。

「完二、触ってみる?」
「えぇっ、いや、俺は」
「こういうの興味なかったっけ?
あぁ、よくわからなかったんだな」
「そ、それは」
違う、と俺は言い切れなかった。
俺のものも、反応し始めたから。

「じゃあ、今日は見学すればいい」

白い指が入り口を差す。

「そこ、座れよ」

視線一つで、服従させられる。
俺は唾をのみこみ、震える手で扉を閉めた。





堂島の後ろに先輩が座る。
二人羽織のように密着し、
ぴくりと震える堂島の足が閉じないように、自分の足を差し込む。
俺が、堂島のすべてが見えるように開脚させたのだと、なんとなくわかった。
堂島は俺の存在に気づいていない。
先輩と2人きりで、快楽を貪っていると思っているのだろう。
むかっとした。
そのかわり食い入るように裸体を見た。


開脚の衝撃でバイブの位置が動いたのか、
堂島は腰をくねらせた。
「いやらしい動き」
先輩は堂島の耳朶を食み、ささやく。
堂島の顔が赤く染まる。
耳栓をしても至近距離なら、声は聞こえるらしい。
「ほしいの?」
呻き声と、こくんと頷く仕草。
普段の堂島らしからぬかわいらしさに、
反応を示していた完二のものも、濡れてきた。
正座では前がきつくなり、あぐらをかく。

「まだ、だめだよ」
「んん〜っ!」

かちっと音がした。
ついで、バイブの音が大きくなる。
堂島が暴れる。
だが、堂島より華奢なはずの先輩が簡単におさえこむ。
あいている手で無慈悲にも、先走る堂島の先端をすりあげた。

「ん〜! んんっ!」

びん、と堂島のつま先が跳ね上がる。
汗ばんだ胸が上下し、放心したように先輩にもたれかかる。

「いっちゃったんだ」

ぴん、と堂島のペニスを細い指が弾いた。
しかしそこは、たちあがったままだった。
完二にはそれがよくわからなかったが、
そういうこともあるのだと興奮した頭の隅で理解した。


「も一回、いっとく?」
ぶるぶると首をふる堂島。
声なき声で、必死に先輩に何かを頼んでいる。

(お前のもので、いかせてくれ・・・)

幻聴に、完二は、びくんと震える。
自分は完全に勃起していた。

「仕方ないな。・・・ごめん、完二。見学、ちょっと短くなるけど」

先輩は俺にだけ聞こえる声で言った後、
堂島のバイブを一気に抜いた。

「んん・・・っ!!!」

突き出した堂島の腰をぐっと引き寄せ、
挿入する。

怜悧な先輩の顔に、朱が走る。
先輩も余裕がない。
俺も、そうだ。


結合部の卑猥な音。
快楽に歪む2人の顔。
まるで俺が2人を犯しているような背徳感がわきあがる。
びりっと背筋に、電流が走った。


「だめだよ、完二」


自分のものを取り出そうとする俺に、
先輩の声がかぶさった。


「今日は見学。
触れれば、正式に、お前はこちら側の人間ということになる」

赤い唇を舐め、先輩は俺をみやる。

そ、そうだ。
俺は男に興味はないはずだ。
むしろ女がいい。女だ。
お、女なんて、こここここわくねぇ。

男なんて男なんて男なんて。

・・・なんで、こんなにエロいんだ?
にじむ汗、蠢く腰、色づく体、蜜の音。
俺の目も体も心も、2人の快感を追っている。

先輩はさらに激しく堂島を突き、
堂島はたえられず畳に体を投げ出す。
それを追うように、さらに深く先輩が腰を突き出す。

俺のすぐ前に、堂島の顔がきた。
まるで俺に、許しを願うように畳に顔をこすりつけ揺さぶられ、
汁という汁を流す。
俺のものをねだるように、発せられる声。息が荒い。

俺の息も荒くなる。

堂島を犯しているのは俺で、
俺を犯しているのは堂島だった。

小さい頃から知っている
不器用で優しい近所のおじさんで、
何度も俺に説教してきた警察のおっさん。
その人が、
俺の前で泣き、喘ぎ、むれるような性を垂れ流している。


「そろそろ、イかせてあげる」


堂島の頬に口づけ、
ねっとりとした視線を俺に送ってきた。

「『いっしょに』いこう」

強い波がきた。
堂島の性器を縛っていた紐を先輩は解く。
その瞬間、深く腰を突きいれ、
俺も腰を前に出し、
堂島も白い蜜をはなったのだった。



荒い息のまま、先輩は堂島さんの精液を手ですくった。
白い指に絡む卑猥。
俺に見せつけるように、先輩はその指をなめる。

口もとを解放された堂島と、濡れた舌をからめる。
いやらしくクチャクチャと音をたててキスする2人。
誘うように、先輩は、まだ白いものが付着した指を俺に差し出す。


俺は、初めてごちそうを食べる子供のように、
その指をなめた。






「じゃあ、俺・・・」
「気をつけて帰れよ」

ぼんやり霞んだ頭を縦にふる。
今は、何も考えられない。
考えたくない。

靴、はかねーと。
玄関に腰をおろす。

「完二」
俺の肩に、手がかかる。

「完二、わかってるな」
後ろから、あの指が、唇にふれる。

「これは『俺たち』の秘密だ」
「・・・・・・・・・はい」




そのときの先輩の表情は、覚えていない。

ただ一つ言えることは、
扉を開けたのは俺自身だったということ。

俺は引き返せない場所に踏みこんでしまったのだ。
快楽の砂金が眠る、ほの暗い川の底に。






副題「秘密コミュへようこそ」
いろいろとすみませんでした(笑)
うぅう、自分、エロスをエロく書けないでゴザル。
シチュはエロいはずだが、はて。
管理人の力量はともかく、このコミュの動向は気になるなぁ、はぁはぁ。

完二x堂島とか、需要はあるのだろうか?
まぁきっと書くことでしょう★
その前に、主に先をこされた足立の逆襲をを!