酔芙蓉




寝静まっている家に入るのは、酔っぱらいでも気をつかう。
堂島はふらつきながら静かに居間に辿りついた。
いつものくせでリモコンを探し、
あきらめてソファに座ると、眠気が襲ってきた。
服、着替えないと・・・・・・・・・。



ソファからずり落ちかけて起きた。
「・・・ちゃんと寝るか」
奈々子と一緒に見たアニメの怪獣のように
ゆっくりと寝室に向かう。

目覚ましは鳴らすようにしてっから、
着替えて、
布団だして、もぐりこんだら今日の仕事は終了だ。

残業手当を増やしてくれ〜〜〜と
こっそり歌いながら部屋に入った。

「ん?」

布団は敷いてあった。
ついでに甥っ子もその上に転がっていた。

「お〜い」

布団敷いてくれてたのはありがたいが。

「寝てんのか?」

細い肩をつついた。
上品な寝息が返ってくる。
状況を考えようとしたが眠気が勝った。

多少窮屈だが、1人寝ようが2人寝ようが、
関係ない。

布団をかけなおしてやり、堂島も横に寝転がった。

酔いが冷めてきたのか、少し寒い。
吐息を感じ少し目をあけると、
甥っ子の高い鼻梁と、きれいな唇が目に飛び込んできた。

一応、こいつと血がつながってるんだよな。
どこか似てる、か?

形が似ていないなら、と、
親指で自分の唇を撫で、少年の唇も撫でた。
やわらかい。
何してるんだ、俺。

軽く笑って目を閉じた。



・・・。
・・・。
・・・。


ふと、堂島は目を覚ました。
眠ってからあまり時間はたっていない気がした。
それは、ともかく。

寝返りがうてない。

どうやら甥っ子が、俺を抱き枕か何かと勘違いして、背後から抱きしめているようだった。
腕を引きはがそうとしても、がっちり指が組まれていて離れない。

野郎のものがあたってるのは、げんなりするが仕方ない。

軽く息を吐いて、目を閉じた。
閉じようとした。

少年の指が、動いていた。
寝ぼけてるんだろうなと思った。
へそのあたりを撫でるくらいは、どうにか我慢したが、
・・・気のせいだろうか。
少しずつ少しずつ、その指が下におりていっているような・・・。

やばい。

動き回る細い指を、ずらしずらしどうにかそこへの到達を防いだ。

・・・ようやく止んだか。

ほっとした瞬間、びりっと電流が走った。

なんで胸、つまんでんだよ!

「おい、ちょっと、やめっ、んんっ!」

強く乳首をすられて、体がはねる。
身じろげばさらに引き寄せられ、次第に息が熱っぽくなる。
いつのまにか少年の左手は、胸のあたりをはいまわり
右手は堂島の下着の中のものを捕まえていた。

「はっ、んっ、あぁああっっ」

にちゃにちゃと湿った音が響く。
腰が浮くのを止められない。

なんだ、これ。
え、どうなってんだ?

俺はいつものように家に帰ってきて、
そりゃちょっと酔っていたが、
いつものように自分の布団で眠って、

甥っ子に触られてる。

甥のものも硬さをまし、衣服ごしにすりつけてくる。

「ちょ、それは、まずい・・・んあっ!」

太腿に挟まった、その感触。
擦れ合って刺激を与え合う、性器。

「あっぁあああああ!」

ぐりっと擦られて、たまらず下着の中に出した。
後ろの感触も、すぐに変化する。


「はぁ、はぁっ、んっ」
「・・・」


また不埒な手が動き出す。

「い、いい加減にしろ!」

一瞬の隙をつき、後ろに肘を叩き込んだ。



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「堂島さん。起きたら俺、ソファにぐるぐる巻きにされてたんですけど」
「知るか」
「何か怒ってます?」
「覚えてないのか」
「え?」
「・・・もう、いい」

溜息を吐き、箸を置いた。
静かな食卓に、暴力的な朝日が差し込む。
あんな非現実的なことの後でさえ、
爆睡できてしまった己の健康が、少し嘆かわしかった。

「・・・またけんか?」
菜々子が心配そうに見てくる。

「あ、いや、違う。ん? 違わないか?」
「違わないんですか?」
子供2人に見つめられる。
「・・・あ〜、もう何でもない。昨日は、ちょっと酔ってたから、な」
「・・・それで遅かったの? お父さん」
「すまんすまん。今日は早めに帰るから。ほら、もう支度しなさい」
「は〜い」
菜々子が足早に立ち去る。
「お前も、遅れないようにな」
「はい」

堂島は、ばりばりと頭をかいた。
もういい。深く考えるのは、やめだ、やめ。
あいつは、変な夢でも見てたんだろ。
俺も、たぶん、そうなんだろ。

今日は忙しいから、昨夜のことなんて考えてる余裕ねぇんだよ。
犬に噛まれたと思えば・・・。
「堂島さん」
「わっ! 背後にまわるなって!」
「すみません。行ってきます」
「お、おう。気をつけてな」


靴を履きドアノブを回すまでの仕草を、堂島はぼんやり眺めた。
学生服からのぞく白い手。
淡い色の整った爪。
昨夜の、あの指。

かっ、と頬が熱くなる。

少年が振り返った。

「じゃあ、また」


くすっと少年が笑ったのは気のせいだったのか。

結局その日は仕事に身が入らなかった。






お父さんピンチの巻でした。
別名、「魔弾の射手」(笑)
タイトルの「すいふよう」は、時間によって色の変わる芙蓉の名前です。
明るいときは白、暗くなると桃色になるらしい。
さて、2人とも真っ赤っかになる日はいつでしょう。ニヤリ。