夜に待ち合わせ




「・・・足立。おい、足立」
肩を揺さぶられて、うっすら目を開ける。
「どどどどどど堂島さん?」
いきなりの堂島のドアップに、跳ね起きた。

「なななななな何ですか?」
「そんなに驚くなよ。いじめてるみたいじゃねぇか。
・・・まぁいい、もう今日は帰れ」
堂島の肩越しに、時計を見た。
黒くなった窓に、蛍光灯と2人のシルエットが光っている。
仮眠と思ってソファに寝転がったはずが、がっつり数時間寝ていたようだ。
「すみません・・・でも、今日しめきりの仕事が・・・」
辞書なみに積み重なった書類に、2人分の視線が集まる。
「どれだ?」
「あの・・・黄色い付箋までです・・・」
「ふむ・・・」
「あの、堂島さん?」
「顔洗ってこい。仕事はそれからだ」

堂島の右手は、書類の束を掴んでいた。




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「本っっっっ当に、ありがとうございました!」
1時間後、既に帰っていた上司の机に書類を置き、
足立は堂島に頭を下げた。
「次は、俺、手伝いますから!」
「まぁそう気ぃ使うな。最近、お前を外に連れ回ってたからな。
お互い様だ」
「あ、あの、よかったら飲みに行きませんか?」
鞄を持った堂島が、きょとんとする。
「お前、疲れてるんじゃないのか?」
「夕飯まだでしょう?」
「そうだが・・・」
「一杯だけでいいですから」
「・・・そうか?」
「はい!」
「よしっ!」
軽く背中を叩かれる。
「一杯、いくか!」




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「堂島さん、起きてくださいよ〜」
「あん? 俺は酔ってねぇよ〜、飲んでるだけでぃ」
「完璧、酔っぱらいじゃないっすかぁ。家、どこっすか。
送って行きますから」
「あ〜? 俺の家はお前の家だ〜」
意味不明。読解不可能。
それでも会計は堂島が済ませ(酔っぱらいの勢いもあり、払わせてくれなかった)、
肩を貸して歩き出した。

田舎の夜は暗い。
防犯対策で街灯を増やす計画もあるらしいが、足下すら見えない闇もある。
茂みに踏み込めば、何が潜んでいるかわからなくなる。
自分の奥底に潜む狂気のような・・・。
「・・・あだ、ちぃ」
耳元で呼ばれて、ぞくっとした。
「はいはい、ここにいますよ」
誤摩化すように、腕を抱え直した。

俺より大きい手。
熱くなった体が、時折ぶつかる。
一日いっしょに歩きまわって曲がったネクタイが、
少しほどけている。
ちらつく胸元から、夜の底に漂う、
官能が匂ってくる。
官能?
自分に生まれた感情に、顔が赤らむ。
え、いや、俺、ここ青ざめるところじゃね?
まずいまずいまずい、まずいぞ。
違うこと考えよ、えーとえーとそうだ。
「手帳に住所書いてます? ちょっと見ますよ」
立ち止まり、堂島の服を探る。
「・・・くすぐってぇよ」
堂島が喉を鳴らす。
だーかーら、それがエロいっつーの!
「ん・・・」
尻ポケットを探ったとき、堂島の声が変わった気がした。
逃げるように離れていった腰に、喉が鳴る。
俺も酔っている。
いやもっと前から・・・?

「胸、さわりますよ」

そろりと手をのばす。
鎖骨に触れた。
くぼみを辿り、胸ポケットの内側に指を差し入れる。
ゆっくり時間をかけて、ポケットを探る。
偶然を装って、時折、胸の飾りに触れ、かすめ、摘んだ。
「うっ、あっ・・・」
堂島の体が震え、バランスを崩す。
そのまま草むらに押し倒した。

唇にかぶりつく。
舌をねじこみ、堂島を味わう。
「はっ・・・ん、」
弱々しく肩に触ってくる堂島に、
足立は腰をすりつけた。
かたくなったものどうしが、新しい急流をうむ。
「あ、だち・・・んんっ」
しなる背、うごめく舌、染まる肌。
震える指をどうにか動かして、
2人分のジッパーをおろし、取り出し、こすりつけた。
「あっ! んっ、あっ」
敏感な部分を指ですってやれば、さらに硬度を増す。

「堂島さんも、さわってくださいよ」
「そ、んな・・」
「いいから、ほら」

あいている指を堂島の手に絡ませ、
そのまま2人のものを握らせる。
びくっと震えた堂島だったが、
足立が上からしごき始めると、
ゆるゆると動き出した。
「なんだ、積極的じゃないですか」
「それは、お前、が・・・」
「そうやって自慰するんですか?」
「そ、れは・・・っ」
真っ赤になる堂島が、かわいかった。
いつもなら出て来ない卑猥な言葉を、
その顔にぶっかけてやりたい。
もっと喘がせたい。
ドロドロに汚したい。
「もう、いくんだ?」
にやりと笑うと、「言うな」と指がはやくなった。
「お前も、いっしょ、に」
潤んだ瞳が見上げてくる。
背筋が、かっとなった。

腰を押し付け合い、唇をむさぼった。
そして、堂島の悲鳴ごと舌で吸い上げ、
しばらく待った。

「・・・堂島さん?」

息が整った頃、上司の顔を覗き込む。

「寝てるし・・・」

軽く頬を叩いてみたが、起きる様子はなかった。


「だから、住所、どこだよ」

街灯が、瞬いた。





*******************


「おはよう」
「お、おはようございます」

定時ぎりぎりに出勤した足立は、堂島の顔がまともに見れなかった。
とりあえず今日のスケジュールをチェックしている堂島の傍に立ち、
頭を下げた。
「堂島さん、あの、昨日は・・・」
「あぁ、家までお前が送ってくれたんだろう? ありがとな」
「え、いえ、俺も書類、手伝ってもらいましたし・・・」

堂島さん、はぐらかしてるのかな?
聞きたいが、聞きたくないような気もして、黙り込んだ。

「署から出た後のことなんだが・・・」
うわ、来た。
「俺、どのくらい飲んだ?」
「・・・ウルトラメガジョッキ1杯。実質、普通ジョッキの3倍以上です」
「それでか〜」
「はい?」
「店で飲んでる途中から記憶ないんだよな」

え?

「え? えぇええええええええええ!?!!!」

そりゃねーだろぉおおおおお!!!?

「あ? もしかしてゲロでも吐いたか?」
「吐いてないっすけど、えぇええええええ」

じゃあ何か?
あのエロい堂島さんと、あのエロは無かったことにぃいいいいい!!!???

え、いや、拒絶されるよりはましだけど、それでも、えぇえええええ!!!!???


「なんだなんだお前ら」
通りがかった同僚が、覗き込んできた。
「おねーちゃんの店でも行ったのか?」
「ち、違いますけど・・・」
「じゃあ何か? お前ら深い仲ってやつ?」
「あ? まぁ、こいつは相棒だからな。な、足立?」

堂島さん。たぶん、それ、意味違う。

「え? まじやっちゃったの?」
「ち、違いますよぉおおおお」
「何故に男泣き?」
「うるさいですよぉおおお。放っておいてくださいよぉおおお」
「こいつ、まだアルコール残ってるみたいだな」

「ま、まぁ足立。記憶のない俺が悪かった。今度、また飲みに行こう。な?」
「・・・だったら次は、堂島さん。俺より飲んだらだめです」
「あ、うん。・・・今日はお前、何か妙な迫力あるな」

「ま、まぁ2人とも仲良くな」

俺の仄かな殺気に、同僚は姿を消した。


「堂島さん。今日行きますよ、今日」
「あ〜、え〜と、はい」

鈍い返事の堂島に、俺は顔を近づける。
ふれるか、ふれないか、ギリギリの距離。

「記憶、なくさないでくださいね」

今日こそは、記憶のあるあなたからねだられたい。



いつもよりふやけた堂島の唇を発見し、俺はにやりと笑ったのだった。





がんばれ足立! 負けるな足立!
きっと今夜は残業だ(笑)

それにしても足立、なかなかの変態っぷり。
いいぞ。もっとやれ!
・・・失礼しました☆