夢の中に会いにきて 〜2〜
気持ちは晴れなくても朝は来る。
元々眠りは浅い方なのに、薬のせいか、いつもより眠れたくらいだ。
仰向けのまま、ぼうっと天井を見上げていると、真ん中の方にシミを見つけた。
あの位置なら、机の上あたりか。
堂島さんと僕が昨日、座ってたあたりの・・・。
ぶあっと顔が熱くなって、頭から布団を被った。
消したいと思えば思うほど、鮮明にあのときのことが思い出されて、生々しさに体が縮こまる。
あの人が僕を触る指、髪を撫でる仕草、包み込むような瞳。
異物感とそれに勝る射精への高まり、大きな手の温かさ。
いっそ、「好きだ」とか「やらせろ」とか下卑た言葉を吐かれたのなら、
軽蔑して貶めることもできるのに、堂島さんにはその手のいやらしさや下心が感じられなかった。
まるで家族にするような、愛情すら感じる言葉であり態度であり優しさで、そっけなさだった。
だからって、ふつう同僚にあそこまでするか?
だいたい家族の温かみなんてもの僕には・・・。
軽く舌打ちして、眉をひそめた。
目覚まし時計が鳴る。
「・・・くそっ」
八つ当たりのように止めて、布団から顔を出した。
どんなに悩んだところで、1人分の答えしかないし、
行きたくなくても出勤時間は迫っている。
「今日、休もっかなぁ・・・」
ぽつりと呟いて、携帯を耳にあてた。
「はい。こちら稲羽署」
心臓が暗い方に跳ね上がる。
堂島さんの声、だ。
「もしもし?」
「え、あ、あ〜」
「・・・その声、足立か」
ばれた。
最悪のパターンだ。
頭の中が真っ白になって、唇が震え出す。
「は、はい。足立です。おはようございます。あはは・・・」
「熱、下がったか」
「あ、はい。おかげさまで〜」
しまった。まだ下がってないことにしときゃよかった。
「そうか。あれから気になってはいたんだが」
・・・気になるって何が?
昨夜のことがフラッシュバックする。
この人、何、考えてる? 何、言うつもり?
携帯を持つ手が汗ばむ。
「元気そうでよかった。遅れないように来いよ」
「え〜っと、今日は休みたいなぁなんて・・・」
「・・・迎えに行くぞ」
「自分で行きます」
「おう。じゃあな」
そう言って、堂島さんは電話を切った。
「結局、出勤かよ・・・」
携帯を置いて、溜息を吐いた。
堂島さんは、あきれるほどいつもの堂島さんだった。
じゃあ、昨日のあれは、結局なんだ?
堂島さんにとって、ありふれたこと?
善意?
だれにでもすること?
僕じゃなくても?
怒りとも寂しさともつかない感情が吹き荒れる。
「あ〜も〜、なんなんだよ・・・!」
布団から跳ね起きて、水道の蛇口を思いっきり捻る。
曲がったままのネクタイを着けて、車の鍵を握った。
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僕がぎくしゃくすることはあっても、堂島が昨夜のことにふれることはなかった。
もしかしてこの人ホモ? と思って、それとなく行動や言動を探ってみたが、
怪しい気配はなく、僕に妙なちょっかいをかけてくるわけでもない。
それでも隣にいると意識してしまうので、日中の活動はしかたないとして、
夜は極力2人きりになるのを避け、パトロールの名目で商店街をぶらついたり家に仕事を持ち帰ったりした。
しばらくそうやって過ごしていたが、堂島には変化がなかったし、しだいに自分の方が過剰反応ではないかと思うようになってきた。
見当違いの張り込みをしているようなものだ。面倒だし成果もない。
堂島に問いつめればいいのだろうが、正直できない。したくない。だって何て質問したらいいんだ?
結局僕の中で「あれは何かの事故」ということでけりをつけた。
あの件以外は、彼はいい刑事でいい隣人だし。過剰な親切だったんだ。きっと。
そうやって自分をなだめているうちに堂島への頑さもほぐれていき、いつも通りの日常に戻っていった。
あの夜のことなんて、なかったように。
ほとんど忘れかけていた頃、僕は管理職から呼ばれた。
「足立君、ちょっとお願いがあるんだが」
「はぁ、なんですか」
「急な話で悪いが、私のかわりに出張に行ってくれないか。明日から泊まりで県外だ」
「えぇ!? それまた急な」
「無理は承知なんだが頼むよ」
「は、はぁ」
そこへ、「失礼します」と堂島が入って来た。
「ああ、ちょうどよかった。堂島君。君との出張、私の代わりに足立君が行くことになったから」
「足立が?」
「え、えぇえええ!? この出張、堂島さんとですかぁ!?」
「嫌なのか」
「え、嫌ってゆーか」
「ま。コンビ同士つもる話もあるだろう。とにかく頼むよ。ははは」
ははは、じゃねーよ、この狸野郎。
心の中でぐいぐい踏みつけて、堂島さんの方をそろりと見た。
「今回の出張は講演形式だから、お前は座って聞いてりゃいい。明日、早いから遅刻だけはするなよ」
「はぁ」
釈然としないまま、僕は自分の席に戻った。
机には、すでに、出張関係の書類が置かれていた。
>>>3
Q:センセー。ロマンチックが見つかりません。
A:管理人の中身がおっさんだからでしょう。
Q:ボツにした堂島さんへの質問は?
A:足立さんが堂島さんの行動を問い質す言葉ですね。
「なんで僕の服、脱がしたんですか」
「なぜ僕のお尻をさわったんですか」
「僕のあれ、なんでさわったんですか」
「あんたホモですか」
トキメキとシリアスが止まってしまいます。
他人事なら言ってたかもしれませんね。
ほっといたら、足立さんがテンション高い変な人になります。
修正してこれ? YES!
次はホテルだ〜。