夢の中に会いにきて 〜3〜





公費削減は、出張費にも影響を及ぼしている。
今回請求できる金額も移動費と食費に消えるようなものだから、宿泊するホテルくらいリッチにしてほしいがそうもいかない。
本来なら会場と連携している宿泊施設に泊るらしいのだが、今回は参加人数が多いため、各署が手配した適当なホテルに泊ることになっている。
もちろん、僕は堂島と同じホテルだ。
まぁ個室だから、がまんしよう。
そう自分に言い聞かせながら、2人でフロントの前に並んだ。

「すみませーん、チェックインお願いします」
「はい。稲羽署の堂島様でございますね。801号室でございます」
「・・・はい?」
1人分のカードキーを渡されて、僕は慌ててフロントに詰め寄った。
「あ、あの。個室2つ予約してたと思うんですけど!?」
「俺も、そう聞いてたが・・・」
「少々、お待ちください」

数分して、フロント係が頭を下げた。
「申し訳ございません。最初の予約の段階では2部屋ご用意していたのですが、
1室キャンセルのお電話がありましたので、1部屋のみのご用意とさせていただいたのですが・・・」
「キャンセルゥ!?」
「はい。事務の方から」
「・・・やられたな」
「はぁ!?」
いきり立つ僕を、堂島さんがやんわりとなだめた。
「たぶん今回の出張、俺だけになったと思ってホテルをキャンセルしちまったんだろう。
で、お前が来ることになったのはいいものの、予約し直すのを忘れたってことじゃないか?」
「そんなうっかりミス! いい年した大人が・・・!」
「足立。昨日、俺が怒ったのはなんでだっけな」
「と、とにかく! 空き部屋もう1つ用意してください!」
「申し訳ございません。本日は満室でして」
「えぇええええ!?」
「仕方ねぇな。・・・カードキー、2枚もらえますか」
「はい。アメニティも2人分、すぐにお持ち致しますので」
「わかりました。ほら、行くぞ足立」
呆然とする僕の肩をたたき、堂島はエレベーターのボタンを押した。




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「もうなんなんすか! ありえなくないっすか!?」
「いいからさっさと荷物いれろ」
「う〜、せめて割引くらいしてくれたっていいのに」
ぶつぶつ呟きながら、部屋に入った。
「・・・」
「・・・」
「ベッド、大きいっすね」
「・・・あぁ」
安いホテルの割に男2人が寝転がれるほど広い。妙な圧迫感に、自然と何かを連想してしまう。

「・・・僕、ソファでいいっす」
「椅子しかないみたいだが」
「え〜・・・」
とりあえず荷物を置き、背広をかけた。
「はぁ〜。今からでも別のホテルとります?」
「不慣れな土地で、うろちょろすんのもなぁ。ま、寝るだけなんだ。気にするな」
そうは言っても、野郎2人で同じベッドに寝るっていうのは落ち着かない。
そもそもだれかと一緒に眠ることに抵抗があるし、それにそれに・・・。
悶々としている僕をよそに、堂島はベッドに腰掛け枕元を覗き込んだ。
「このホテル、目覚ましどうするんだ?」
金色のスイッチが並ぶパネルを眺めて、堂島が溜息を吐く。
「いかんな。どうもこういうのは苦手だ」
不良も裸足で逃げ出す鬼刑事がおっかなびっくり触っているのを見て、少し気分が和んだ。
・・・まぁ、悩んでても仕方ないか。
気分転換にと僕は四つん這いで枕元に這い上がった。
「任せてください。こういうの、僕、得意ですから」
「助かる」
「ん〜このスイッチですかねぇ。あ、そこ触ってもらえます?」
「こ、こうか? ラジオついたぞ」
「おっかしーな。じゃあ、これは?」
「あ、これ回すんじゃねぇか?」
同じボタンに向かった2人の手が、一瞬触れ合う。
不意の温かさに、びくっと手を引っ込めた。
「どうした?」
「せ、静電気ですよ。ははは、え、えーと、あ、これですよ。このボタン」
「おお、すごいな。ありがとよ」
微笑まれて、かぁっと頬が熱くなる。
「ええっと、僕、お風呂に・・・!」
後ろに下がろうとして、シーツに足をとられた。
「わわっ・・・!」
倒れる、と思った瞬間、僕の体は、強い力で引き寄せられる。

「大丈夫か?」

耳をかすめる吐息に、ようやく抱きしめられているのがわかった。
シャツ越しに感じる体温。厚い胸。僕1人を支えてもびくともしない力強い腕。
背中と腰に回った指の確かさ。心音まで聞こえそうな密着感。
いつもなら煙草に隠れている彼の匂い。
こんなに近くで触れられたのは、あの夜以来で・・・。

「だだだだだ大丈夫です! も、もう平気ですから!」

わたわたと堂島から離れた。

「ぼ、僕、お湯ためてきますね!」

転がるように風呂場に入って扉を閉めた。

ちょっとちょっと、何意識しちゃってんの僕!?
鏡に映った自分の顔が、真っ赤っかで、悲鳴をあげかける。
ここは赤くなるとこじゃなくて青くなるところだろ僕ー!?
ありえねー! 男が男を意識するとかありえねー!
洗面所の蛇口を思いっきり捻って、水の中に顔をつっこむ。
「僕は、女が好きなんだー! 
男なんて論外!
堂島さんなんて、気にならないんだからー!」

ひとしきり叫んで、水から顔をあげた。
「よ、よし。これで大丈夫。はは、僕にかぎってそんなアヤマチなんてないない。
ふふふ、ははは」

「足立〜。なんか言ったか〜?」
近づいて来た足音に、びくっと震えた。
「だ、大丈夫ですよ!? なんでもないですから!!!」
「そうかぁ? 風呂場で溺れんなよ〜」
「は、はぃいいい!」

足音が去っていき、僕はへなへなと座り込んだ。










>>>4



足立さん乙女回。
ちょっとほだされてますが、まだノンケ。

部屋番号はそのまんまですねw
108号室でもよくってよ★

次はポップ&シリアスで。