夢の中に会いにきて 〜5〜
「・・・ち。・・・だち」
「・・・」
「足立。おい、足立」
「・・・ん〜」
肩を揺すられ、僕は布団にもぐりこむ。
「・・・。こら足立! 起きんか!」
「ぐあっ! いったぁ〜〜〜」
背中への衝撃に、僕はもぞもぞと起き上がった。
「堂島さん、横暴〜」
「呼んでも呼んでも起きないからだろうが。朝食食いそびれるぞ」
そういえばここホテルだっけ。
カーテンの開く音がして、そちらに目を向けた。
すでに堂島は支度を済ませたらしい。白いシャツが眩しくて、目を細める。
昨夜のことをうっすら思い出してきて、僕は慌てて着崩れた浴衣をおさえながら洗面所に駆け込んだ。
ざばざばと顔を洗って、赤らみそうな頬を冷やす。
「急げよ〜」
「はーい!」
堂島の不機嫌な声に、ようやくいつもの調子が戻ってきて、クローゼットからスーツを引き寄せた。
「ちょっとくらい曲がっててもいいかな」
ネクタイを適当に直して、洗面所から出た。
出張先は、コンサートでも開けそうな大きなホールだった。
講演が始まると座席側の照明が切られ、自然とまぶたがおりてくる。
堂島にこづかれながら、スライドと夢の往復をする忙しい内容となったが、どうにか午前の部を終えて、用意されたお弁当をもらいにいった。
参加地域ごとに割り当てられた会議室に移動して、パイプ椅子に堂島と一緒に座る。
小さなお茶缶をあけて、一息ついた。
「堂島さん。お久しぶりです」
話しかけてきたのは知らない女性だった。
美人で、活発そうな瞳が印象的だ。
僕より少し年上だろうか。小麦色の肌に紺色のスーツがよく映えている。
何より、ブラウスを押し上げる立体感が素晴らしい。
久しぶりの女性成分に、一気に目が冴える。
「おう、久しぶりだな。元気だったか?」
「おかげさまで。隣いいですか?」
頷く堂島の隣に彼女が座った。
「こっちは4月から稲羽署で働いてる俺の相棒だ」
「初めまして。足立です」
「初めまして。私も3月までは稲羽署にいたんですよ」
「ちょうど足立と入れ替わりだったな」
「えぇ。いつか一緒に捜査したいですね」
彼女の魅力的な笑みに、頬がゆるみそうになる。
「お前、1人で来たのか?」
「えぇ。他の会議で上司が来れなくて。・・・堂島さんは午後の部が終わったら、予定はあるんですか?」
「いや、特にないな」
僕が何か言う前に、女性は堂島に体を近づける。
「堂島さん。この後、付き合ってくれません?」
どくん、と心臓が跳ねる。
「例の事件か?」
「えぇ。まぁ・・・」
「わかった」
「すみません足立さん。堂島さんをお借りしますね」
「おい、俺は道具かぁ?」
苦笑しながらも堂島はどこか楽しそうだ。
・・・なぜだろう。いらいらする。
「そういうことだから足立。午後の部が終わったら別行動でいいか」
「・・・はい」
急に味がしなくなった弁当を口に運びながら、2人の会話に適当に相づちをうった。
途中、何度か堂島の腕を彼女がさわった。
その度に、胸の奥がざわめいて。
わけがわからない苛立ちを、無理やりお茶で流し込んだ。
堂島と別れて、1人で会場を出た。
すぐにホテルに戻る気はせず、道なりに歩いてみる。
パチンコや呼び込みの声が近づき角を曲がれば、 揚げ物やソースの香りにまぎれ、煙草や香水、知らない土地の匂いがしてポケットに手をつっこんだ。
信号待ちしながら携帯を見たが、堂島からの連絡はない。
夕飯、どうしようかな。
極彩色の看板を眺めて、ぽりぽりと頭をかく。
たまには女の子の店に行くのもいいかもしれない、けど・・・。
なんとなく気乗りしなくて、その場を離れた。
****************************************
「足立〜、電気くらいつけろよ」
部屋の中が明るくなって、ようやく日が沈んだことに気づいた。
ベッドに腰掛けたまま、ずっとぼんやりしていたようだ。
「夕飯、食べてきました?」
「いや、まだだ。お前は?」
「・・・食欲ないんで」
「外、食べに行くか? 何ならコンビニでも・・・」
「楽しんできましたか?」
思ってもみなかった自分の言葉に、僕は混乱した。
それ以上に、なぜか怒りがこみ上げてきて。
「あの女性とホテルでも行ってきたんじゃないですか」
「おい。何言って」
堂島の怪訝な顔。僕の心にどす黒い風が吹き荒れる。
「だって昔の同僚で美人じゃないですか。堂島さんだって悪い気はしないでしょ? 美女との再会で燃え上がったんじゃないですかぁ?」
「・・・あのなぁ。俺とあいつは」
「はは。のろけ? 聞きたくないです〜」
あざけり笑って、ベッドから立ち上がった。
「明日もどうせイチャイチャするんでしょ? 僕はお邪魔ってね」
肩をすくめて、堂島の横を通り過ぎる。
「おい。聞けって・・・!」
つかまれた腕を振り払った。
堂島の顔に僕の肘が当たった。
「あ・・・」
さぁっと血の気が引き、正気が戻ってくる。
「僕、僕・・・」
謝らないと、と思うのに言葉がでてこない。
恐ろしい沈黙の後、堂島がぽつりと言った。
「お前には関係ないだろ」
目の前が真っ暗になる。
「・・・以前、一緒に追ってた事件の捜査情報を交換しただけだ。
お前が言うようなことはない」
背後で扉が閉まった。
「僕、は・・・・・・・・・」
握りしめた拳の行方がわからず、立ちすくんでいた。
>>>6
黒足立さんちょっと降臨。
あ〜早くでれさせたい。
冒頭部分の子どもっぽい足立さんや、着崩れた浴衣は私の趣味ですv
そこに萌えがあるかぎり、ぐだっても書く・・・!<腐
次で仲直りできたらいいですが・・・。