Aquarium Note




部長と事務から年休を消化しろと半強制的な提案をされ、堂島は昼から帰ることにした。
家に電話し、車を走らせる。
日曜日。世間と休みが同じとは珍しい。
家までの短いドライブを楽しみたいところだったが、さっきまで仕事漬けだった頭は、注意深く周囲を観察し、事件の兆候を探る。休みを素直に楽しめない。不器用な思考だ。
……昼寝でもするか。
駐車し、玄関を開けると、予想より大きな声で「お帰りなさい」と迎えられた。
『お邪魔してます!』
甥の友人達だ。元気な挨拶に、頬がほころぶ。
「おぅ、ゆっくりしていってくれ」
荷物を置いてネクタイを緩めると、男子と話していた菜々子と天城、里中、久慈川が寄ってきた。
「私たち、これからプールに行くんです」
「菜々子もー!」
「そうか。気をつけてな」
「叔父さんも来ませんか?」
2階から甥が来る。片手には水泳道具を持っている。
「俺がいたら遊びにくいだろ。お前らだけで行ってこい」
「えー? 堂島さんも一緒に遊びましょうよ」と、久慈川。
「冷たくって、気持ちいいですよ」と、天城。
「プールで売ってる肉メニュー食べましょう!」と、里中。
「閉め切った部屋でいると熱中症になる確率が高いです。プールで体を冷やすのが、懸命だと思いますよ」と、白鐘。
「お父さんとウォータースライダーしたい!」
だめ押しに菜々子が、じぃっと見てきた。
「お父さん、行こうよ!」
「……まじかぁ?」
「決まりです」
甥の言葉にも弱い堂島である。
「……仕方ねぇな」
「やったぁ!」
はしゃぐ子供達に、堂島はやれやれと溜息を吐いた。
「着替えてくるから、ちょっと待っててくれ」
「叔父さん、水着もってますか?」
「俺も泳ぐのか!?」
「俺、堂島さんと泳いでみたいっす!」巽が拳を突き上げる。
「え、完二って、やっぱりそういう」
「うっせぇクマ!」
「痛いクマ!」
どつき合いが始まった横で、花村が苦笑しながら言った。
「え、えぇっと、宣伝になっちゃいますけど、ジュネスなら水着セール中っす」
「男子達、選んであげたら?」
「私、行ってもいいですよ」
「雪子が行くなら私も行く」

若者のエネルギーには敵わない。
こうして10分後には、全員、堂島家を後にしたのだった。





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「先に行ってろ」と堂島は言ったが、結局、全員でジュネスに行くことになった。
マネキンが着ているトロピカルな水着の横を過ぎ、男性用水着コーナーに着いた。
スタンダードな形から、競泳選手のような膝上のタイプ、全身スーツ、市民プールには派手すぎる柄と、たくさんありすぎて、堂島は、げんなりした。
「一番、安いのでいい」
「えー、かっこいいの買いましょうよ」女子達が、きらっと目を光らす。
「これなんかどうです? オリンピック選手みたいですよ」
「え〜? もっとセクシーなのがいいんじゃない?」
「あ、この柄かわいいよ」
「おいおい、ちょっと派手すぎないか?」
「試着しましょうよ〜」
追いつめられた犯人のように、堂島の背中に汗が流れる。

「なぁ。お前の叔父さん、もてすぎじゃね?」
陽介の発言は、市民プールでも発揮された。
引き締まった躰のせいか、選んでもらった水着のせいか、堂島は性別問わず声をかけられた。
少年達はナンパのときの傷を抉られ男泣きしたが、後から来た水着姿の女子に癒され、菜々子でも足がつくプールに向かった。
荷物から浮き輪とビーチボールを出し、プールに入る。
水は冷たいが、それすらも楽しい。
猛烈に泳ぎだしたメンバーの隣で、ビーチボールが跳ねる。歓声に、太陽の輝きも増したようだった。
水になれてきた頃、菜々子が「あれ乗りたい」と堂島の肩を叩いた。
20メートル先に、ウォータースライダーがある。
「よし、行くか」
「あ! 私も私も!」
「全員で行こうぜ!」
「おい、走るなよ!」
我先にとウォータースライダーの階段を上がり、次々と滑った。
時には団子になってプールに飛び込む。
5回着水してようやく解放された頃には、妙な高揚感で、全員笑い転げていた。
「あ〜もう花村君、頭から突っ込むんだもん」
「女子が押すからだろ!?」
「クマ〜、完二に上に乗っかられたときぃ、お花畑見えたクマ」
「クマさん、それ三途の川だよ」
プールサイドに座り休んでいると、巽が急に立ち上がった。
「堂島さん、俺と勝負しませんか」
「ほぅ。お題は?」
「50メートル1本勝負!」
「のった。俺に勝ったら夕飯おごってやる」
「おっしゃあ! 行くぜ!」
「俺もやるやる!」
「俺も、行きます」
「じゃあ、クマ達は応援ね〜」

大人用25メートルプールのコースに、男子全員(熊田を除く)が並ぶ。
堂島、甥、花村、巽の順で、競泳選手のように手を上げて位置につく。
応援チームが声をかける中、久慈川はバスタオルをレースフラッグのかわりに持ち、声を張り上げた。
「行くよ! よ〜い、スタート!」
バスタオルが閃く。
勢いよく飛び込んだ。
水しぶきが上がる。
息継ぎの合間に、女子の声が聞こえた気がするが、水をかきわける音にかき消された。
横目で隣のレーンを探る。
25メートルまでは全員いい勝負をしていたが、ターンの後、差が出た。
残り10メートルで堂島と甥が並ぶ。
あと5メートル、1メートル。
指先が壁に触れ、一気に水面から出た。
ほぼ同時に立ち上がった2人は、ジャッジを見た。
「どっちだ?」
女子達は悩んだ末、「堂島さんの勝ち〜!」
バスタオルが振られ、拍手がおこる。

水から上がって、男子全員、大の字になった。
肩で息する。
空が青い。疲労と、勝負を超えた楽しさが体をじんわり包んだ。
「堂島さん速いっすねぇ。さすが現職の刑事」
「いや、お前らも大したもんだ。年甲斐もなく、本気だしちまった。ありがとよ」
堂島は体を起こした。
ロッカーから財布を出し、甥に渡す。
「副賞だ。お前ら好きなの買ってこい」

『堂島さん大好き〜!』

「ちょっ、お前ら、声でかいって」
「お父さん行かないの?」
「荷物みててやる。菜々子も行ってこい」
「うん! お父さんの分も買ってくるね!」
菜々子が楽しそうに、甥達に混ざる。
一度振り返って手を振ってきたので、堂島も片手を上げて応える。
1人になって煙草が吸いたくなったが、今日は我慢するかと欠伸を噛みころした。



菜々子ルート

主堂(←足立)ルート*エロあり

主足ルート*エロあり

足堂ルート*エロあり